雨の日の唄

□雨の日の唄91〜120
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雨の日の唄91


 ベジータがここでこうしてゆっくりしているからかしら? 雨が止まないのは。

 いつも重力室に篭もってトレーニングばかり。

 孫君が死んでから戦うことはなくなっていたけど、それでも戦闘民族の悲しい性か。毎日トレーニングを続けていた。
 
 でも、昔と比べて明らかに変わったことは、外に修行に出ることが少なくなったことだ。

 今でも時折外へ行くが、人造人間が来る前みたいにほとんどいないということは無くなった。

 今はどちらかと言えば、重力室にいることがほとんどなのだ。

 孫君が死んでから……ということも理由の一つかも知れないが、多分大方の理由がトランクスのことだと思う。

 未来から来た、青年へと成長した私たちの息子。

 それを知った時は酷く驚いたけれど、思った通りにいい男に成長していたからさすが私の息子って思ったけど、思いのほかベジータに似ていて少し嬉しかった。

 昔、孫君と話していた時、悟飯君の何気ない顔がチチさんに似ていると嬉しそうに言っていたことを思い出した。

 悟飯君は見るからに孫君にそっくりで、自分の子が自分に似ている方が嬉しいと思っていたけど、本当は相手に似ているところがあることがこんなにも嬉しいことだなんて思わなかった。

 孫君は意外にも仲間の中で一番に親になった。しかも自分たちが知らない間に。

 そして意外にも父親をやっていて驚いた。

 それを見ているからベジータに期待しないでもなかったのだけれど、やはり子供が出来てもベジータはベジータだった。

 でも、未来から来た息子と彼らの時間で一年という時間を過ごして、ベジータは確実に変わった。

 息子が殺された時、ベジータは憤慨したと聞いた。

 それから孫君という犠牲を払ったけれど平和を取り戻した後、ベジータはトランクスに構うことが増えたように思う。

 そして家にいる時間も増えた。

 本当に未来のトランクスのお陰だ。

 彼がこうして、まだちょっと問題はあるけれど、それでも一端の父親をやれているのは。

 未来の息子も既に亡い父と接することが出来て嬉しそうにしていたし。

 相乗効果だ。そう思った。

 こっちのトランクスも未来のトランクスに比べたら環境のせいか多少わがままなところはあるけど真っ直ぐに育ってくれている。

 幸せだ。

 自分の隣でウトウトしているベジータの肩にもたれて、もう一度心地よい温もりと睡魔に身を任せた。


 end
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