雨の日の唄
□雨の日の唄91〜120
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雨の日の唄98
「……ねえ悟飯君。ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
前から気になっていたこと。それを思い切って聞いてみようと思った。
「何ですか?」
悟飯君はキョトンとした顔で首を傾げた。
「あのね……」
よし、女は度胸だ!! これ聞くのって、何だか告白めいててどうかと思うけど、どうせ悟飯君には深い意味なんて伝わらないわよ。
「……武道家の女の子って……どう……思う?」
「武道家って……ビーデルさんみたいな?」
「ま……そう……ね」
そうはっきり聞かれるのって正直どうしていいのかわからないけど、でも悟飯君だもの。ここは肯定したって大丈夫よね。
「? いいんじゃないですか」
何てことないって顔で即答する悟飯君に、一瞬呆気にとられる。
「だって武道家よっ!! 闘ってるのよ? 女の子がよっ!?」
思わず叫んでしまった。だって女の子が闘ってるって……普通の男の子なら引いちゃうわよ……。
「別に。女の人が闘ってもいいと思うけど」
「だって……女の子よ?」
悟飯君は首を傾げながら更に続けた。
「僕はいいと思うけど。僕のまわりじゃ珍しいことじゃないし」
「え?」
「18号さんだって闘ってるでしょ? それに僕のお母さんだって元武道家だけど?」
「ええ!?」
お、おばさんっ、武道家だったのっ!? あの華奢でキレイなおばさんがっ!?
「言わなかったっけ?」
「聞いてないけど……」
知らなかった……てか悟飯君、何をそんなに大したことじゃないみたいな顔してるのかしらっ!?
「そうでしたっけ? 言った気になってました。まあとにかく、別に僕は女の人が闘ってもいいと思いますよ」
ニッコリと微笑んでそう言う悟飯君に、正直ドキッとしてしまった。
「……そう?」
……別に闘っていいのかしら? 悟飯君がいいって言うなら……私はそれで……て言うか、悟飯君だけがそう言ってくれるだけでいいんだけど……。
「はい。僕、闘ってるビーデルさんかっこいいと思いますよ。何て言うか……動きのひとつひとつがまるでダンスのようで、とってもキレイなんです。流れるような動作って言うんですかね? 時々見とれちゃいますよ、僕」
!?
思わず絶句する。
な、何? その殺し文句のようなセリフは……?
悟飯君は先程と変わらずニコニコとしているし、どう見ても深い意味など隠されているように思えない……。
でも……。
さすがにさっきのセリフは反則よっ!! 深い意味は無くても、そのセリフは私の心臓壊しちゃうわよっ!!
顔が一気に熱くなった。思わず顔を覆う。
「? どうしたんですか?」
「なっ……」
無自覚!? やっぱり天然すぎだわっ!!
「っ、て……天然っ!!」
「へ? 何で?」
その言葉に思わず睨んでしまった。
悟飯君はまだキョトンとしている。
この天然男は自分の言葉の意味すらわかってない!! そりゃ他の女の子も勘違いするわよっ!!
私はこれ見よがしに大きな溜息を吐いた。
end