雨の日の唄
□雨の日の唄121〜
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雨の日の唄130
悟飯君に頭突きを食らわせてしまった。しかも思いっきり。
……ああもう、何やってんだろ……?
でも悟飯君、思いっきり痛そうだったけど。
「ねえ悟飯君」
「はい?」
トランクス君と悟天君を起こしに行こうとしている悟飯君に声をかけた。
「そう言えばすっごい痛がってたけど、悟飯君くらいになると私の頭突きくらい痛くも痒くもないんじゃないの?」
おそらく地球最強、いや宇宙最強レベルだと思う。そんな彼が私如きの頭突きくらいであんなに痛がるとは思えない。
すると悟飯君は暫く考え込んでいたけど何か思いついたように言った。
「ああ、気を抜いてるからかな」
「気を抜く?」
「う〜ん、何て言えばいいのかな?前に気のことを説明したでしょ?」
悟飯君は腕を組んで考えている。
「ええ」
「それを全く入れてないっていうか張ってないっていうか……」
一瞬、間が開いた。
「言葉の通り、気を抜いてるんです」
「……わかるようなわからないような……」
何か適当に説明されたような……気のせい?
ま、こういうことって感覚的なことで言葉で説明するのって難しいんだろうけど。
「うちのお父さんもね、お母さんに殴られたりしたらすっごく痛がるんだけど、それって全くの無警戒ってことなんです」
「無警戒?」
「例えばね、戦ってるときは防御の意味もあって気を入れるけど、それを全くしていないから痛みに関しては普通の人とほとんど同じ……なのかな?他の人がどんな感じかわからないんで何とも言えないけど」
「へえ」
悟飯君たちが普通の人とは違うってことはわかっているけど、やっぱり痛みの度合いも違うものなんだろうか?
まあ身体の鍛え方からして違うのはわかるけど。
「お父さんはお母さんに心底気を許してるから、自然体というか……無警戒というより無防備っていうのかな?」
それは何となくだけどわかる。おじさん、おばさんの前では本当にリラックスしてるっていうか……。
無意識なんだろうけど、それは傍目に見てもわかった。
「まあ僕も心を許せる人にしか気を抜かないんですけど」
「そ、そうなの?」
「ええ。クリリンさんとかは別だけど。あの人たちは普通の地球人だけど一般の人じゃないからね」
悟飯君は苦笑した。
そう言えばクリリンさんたちは地球人なのよね。奥さんの18号さんは人造人間だって聞いたけど……。
でもクリリンさんってそんなに強そうには見えないけど、悟飯君たちが認める地球人最強なのだそうだ。
人って見た目じゃないのよね。
てかうちのパパ、かなり恥かしくない?
「僕も超サイヤ人になれるようになったときは力の入れ方に凄く苦労したんです。お父さんも瞬間移動を身に付けるために宇宙から戻ってこなかったんだけど、もう一つ理由があって、それが力加減のコントロールだったんだ」
「コントロール……」
「超サイヤ人になるってことはね、とんでもない力を手に入れるってことなんだ。上手くコントロールできないとちょっとしたことでいろんなものを壊してしまうんだ」
「大変ね……」
想像しただけでも大変だ……。
コントロールできていないのにあのパワーなんて……家がいくつあっても足りないわ……。
「お父さんが地球に戻ってきてすぐのことなんだけど、お母さんをちょっと叩いただけでふっ飛ばしちゃって大怪我させちゃって」
「そうなのっ!?」
「まあお母さん元武道家だから命に関わるってことなかなったんだけど、その後お父さんが凄く落ち込んじゃって」
悟飯くんは少しシュンとしている。あまりいい思い出じゃないのだろう。
まあそりゃそうよね。お父さんがお母さんに怪我させちゃったんだから。
「お母さんも静かに怒ってるし、何かちょっと空気が重かったな。お父さんが久しぶりに帰って来て嬉しかったのに」
悟飯君はそう言って苦笑した。
「でも次の朝には何だか仲良くなってたけど」
それって……悟飯君、何でもないように言ってるけど気が付いてないわけ?どこまで天然なのっ!?
「あれ?ビーデルさんどうしたんですか?顔真っ赤だけど。風邪でもひいた?」
「だっ、大丈夫よっ!!」
それってズバリ……そういうこと……よねえ?
まあ両親のそういうの、あまり考えたくないし……って悟飯くんは根本的にわかってるのかしら?
何せ田舎育ちだし、幼い頃から勉強と修行ばかりだったって言うし……あ、否応なく戦いに巻き込まれたり?
まあ普通の育ち方じゃないっていうか……。
学校も初めて通うって言ってたし。
……やっぱり悟飯くんに恋愛的なこと期待するのはまだ早いのかしら……?
end