過去拍手SS

□昼下がり
1ページ/1ページ


 自宅の裏山で修行をしているとよく知った気が2つ近付いてきた。

「おとーさーんっ!!」
 自分にそっくりな次男坊が駆け寄ってくる。

「おう悟天、来たんか」

 腰に飛びついてくる次男坊を受け止め抱き上げる。

 次男坊が来た方向を見ると妻が大きな風呂敷包みを抱えて歩いてくる。

「おっ父の所へ行くって聞かなかったんだべ。ついでだし、みんなでお弁当食べようと思ってな」

 妻が抱える弁当を受け取り、3人で木陰に座る。

 そういえば昔にもこんな事があった。

 今では自分と背丈が変わらない長男がこの次男坊よりも小さかった頃。
 
 まだ尻尾のあった長男が今にも転びそうな足取りで飛びついてきた。

 その時も妻は「悟飯ちゃん、おっ父の所に行くって聞かなかったんだべ」と優しく微笑んでいた。
 
 ふとそんな事を考えていると妻が言った。

「悟飯ちゃんも今の悟天みたいにおっ父の所に行くって、よく泣きついたんだべ」
「悟天も泣いたんか?」
「ぼく、泣いてなんかないよっ!!」
「泣きそうだったべ?」

 ケラケラと笑う妻にプリプリと怒る次男坊。

 その様子が嬉しかった。

 1週間前に生き返って、やっと昔の元の生活に戻った。

 自分が死んでから生まれたから、まだ1週間しか接していない次男坊。

 自分が見てやれなかった7年間を取り戻そうとしている自分達。

 知らない時間は話に聞くか想像するしかないけれど、長男と次男坊の共通点が想像を容易くしてくれる。

 そして、妻と思い出を共有できる事が何より嬉しかった。

 そんな時、自分によく似た気を感じた。

 空の向こうを見上げると、学校から戻ってきた長男の姿があった。

 家族団欒の、優しい風の吹く、気持ちいい昼下がりだった。


 end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ