過去拍手SS
□永遠の子供
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僕は熱を出して寝込んでしまった。
もうすぐ僕に弟か妹が生まれるのに……お母さんを助けなきゃいけない時に……。
本当に情けなくなった。
布団を頭まで被って自己嫌悪に陥ってると、部屋のドアが開いた。
「悟飯ちゃん、大丈夫だか?」
「……お母さん……」
お母さんはよいしょっと言いながら僕のベッドの傍の椅子に腰掛けた。
お母さんのお腹はずいぶん大きくなってきた。
お母さんからお父さんを取り上げたのは僕みたいなものだ。
僕が調子に乗らなければ、お父さんは死なずに済んだのかも知れない。
だから僕はお父さんの代わりにお母さんとお腹の子を守らないといけないんだ。
……なのに僕は……。
「……お母さん……ごめんなさい……僕……」
「何を謝ってるんだべ?」
「……だって僕……」
お母さんはニコッと笑って僕の頬に手を当ててきた。
「……悟飯ちゃんは悟飯ちゃんだべ? 悟空さじゃないんだべ?」
「……え……?」
「悟飯ちゃん、悟空さの代わりになろうとしてるべ? おっ母にはそれくらいの事わかってるべ」
「……」
「悟飯ちゃんは悟空さじゃないべ。おらと悟空さの子なんだ。お腹の子のおっ父にならなくてもいいんだべ」
お母さんはそう言って僕の頬を撫でた。
「おめえはずっとおら達の子供でいてくれたらいいんだ。この子のお兄ちゃんでいてくれてたらいいだ」
お母さんはそう言ってお腹を優しく撫でた。
「……お母さん……」
「悟空さが死んでからおめえは頑張りすぎたんだ。おらもおめえには心配かけちまって……無理しすぎて疲れちまって熱さ出しちまったんだ。それにおめえは5歳の時から戦場に出てるんだ。もう普通の子供に戻ってもいい頃だべ?」
お母さんの目は限らなく優しい。
「お腹の子におっ父がいなくても、おっ母とおめえがその分愛してやればいいだ!!」
涙が出てきた。
お父さんが死んでから、僕はお父さんの代わりにならないといけないと自分を追い込んできた。
お母さんのお腹の子のお父さんを奪ってしまったのは自分なのだからと。
でも僕は……。
「……僕……本当にお父さんの代わりにならなくていいの?」
「当たり前だべ!!
おめえはまだ子供だ。おっ父なんかにならなくていいべ。おめえはこの子のいいお兄ちゃんになってくれたらいいだ。……それに、ずっとおら達の子供でいてくれな」
僕は返事をしたくても声にならなくて、何回も頷いていた。
「泣き虫なお兄ちゃんだべな。ほら、涙を拭いてしっかり寝ねえと熱下がらねえべ?」
お母さんはそう笑って僕の涙を拭った。
「……はいっ!!」
僕はずっとお父さんとお母さんの子供でいていいんだ。お父さんとお母さんの子供のお兄ちゃんなんだ。
そう思うと何だか気が楽になった。
明日には、きっと熱も下がっているだろう。
end