過去拍手SS
□慈しむべきもの
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「……悟空さ……?」
生まれてきた子供はまるで夫の生まれ変わりかと思うくらい夫にそっくりだった。
長男が生まれた時も夫にそっくりだったがここまででは無かった。
息子と自分の父親が息を飲むのがわかる。
自分とて一瞬息をするのを忘れたくらいだったから。
息子が「お父さん……」と呟いたのが聞こえた。
父が「生まれ変わりだべ……」と言った事も…。
……でも……。
「さすが悟空さの子だべ。そっくりだべ?」
そうだ。この子は夫の子だ。夫と自分の子なのだ。
決して生まれ変わりなんかじゃない。
息子も父も自分が言わんとする事がわかったように、
「…そうだね。お父さんそっくりだね!! お父さんの子だもんね」
「そうだべな!! この子も婿殿のように強い子になるべ!!」
「うん!! きっと優しい子になるね!!」
口々に言い合った。
夫が遺した命はあまりにも夫にそっくりだったけれど、この子は自分の子供であり、息子の弟であり、父の孫なのだ。
そして、夫の子供なのだ。
決して生まれ変わりなんかじゃない。
自分達が慈しむべき新しい家族なのだ。
例え夫がいなくても、自分達はずっと家族なのだから。
end