過去拍手SS
□デート
1ページ/1ページ
「なあなあ悟空さ、あれかわいいべ?」
「どれがだ?」
珍しく腕を組んで街を歩く悟空とチチ。
これも修行がしたいとごねた悟空をチチが押し切るように決行した結果だけれど。
面倒だと思いながらも、いつもと違ってオシャレをしているチチにドキドキもして、そんなチチに不埒な視線を送る男共を牽制しつつ、不愉快だけどその羨望の眼差しに優越感も抱いて。
まぁたまにはこんなのもいっか。なんて思う自分もいる。
こんな風に腕を組んで街を歩けるなんて。
普通の恋人同士みたいにデートするのが夢だった。
自分達はちょっと変わった夫婦だから、こういうデートができるなんて思わなくて。
自分の言う事を聞いてくれるとは思わなかったから、とにかく嬉しくて。
普段の道着ではない、自分が選んだ服を着ている悟空はいつもに増してかっこいいから、その辺の女の子の視線を独り占めしている。
すごく不愉快だけど、悟空は自分の旦那さまだから、どんな視線も余裕で受け流そうとしている自分もいて。
ただこの天然夫婦、二人して自分に対する視線に気付いていない。
でも相手に対する視線には鋭いのだけれど……。
何で気付かないんだ? とお互いに思う。
チチに不埒な視線を送る男共も、悟空を色気たっぷりの目で見る女達もすごく不愉快だけど、嬉しそうに笑うチチを見るのも、自分の選んだ服を着て、よりかっこよくなった悟空を見るのもいい。
どんなに視線を送られても、自分がその視線から守るから気になんかしない。
だからこうして二人でパオズ山とは違う街の雑踏の中をゆっくり歩くのも悪くは無い。
たまにはデートもいいなと思う。
……でもやっぱり。
パオズ山で二人っきりでいた方がいいな。と思うパオズ山の似たもの夫婦だった。
end