過去拍手SS

□かくれんぼ
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「もうい〜かいっ?」
「まぁ〜だだよ〜」

 かくれんぼがしたいと息子にせがまれ、自分がオニを買って出た。

 普段なら常に息子の居場所を把握しておくために気を読んでいるのだか、今日は読まずにいた。

「もうい〜かいっ?」

 再度声をかける。

「もうい〜よっ!!」

 かわいい息子の声が聞こえてきた。

 さぁどこだ?
 声の聞こえ方からすればすぐ近くだ。

 キョロキョロと辺りを見回すと、草むらの陰から尻尾がピョコピョコ。

 プッと吹き出しそうになるのをこらえて探すフリをする。

「悟飯はどこへ隠れたんだ?父ちゃんには難しいぞ〜」

 わざと大声で言う。

 すると、フフフッと楽しそうな声が聞こえてくる。

 その拍子に尻尾も大きくユラユラ揺れる。

 その様子がおもしろくてかわいくて、また大声で言う。

「悟飯どこ隠れちまったんかなぁ? あっちかなぁ?」

 わざと息子から離れると、尻尾はちょっとビクッと震えた。

 それからまたちょっと離れて、

「悟飯見つからねえからうち帰っちまってもいっかなぁ」

 意地悪く言って飛び上がる。

 すると尻尾がピンッと伸びて、

「やだっおとーさーんっ!!」
 泣きながら草むらから飛び出してきた。

 息子の前に着地すると、トンッと脚にぶつかった。

 息子は泣きべそをかいて見上げ、自分だと確認すると更に大泣きした。

「おとーさーん置いてかないでーっ!!」

 抱き上げてやると首に抱きつき泣きじゃくった。

「ワリィワリィ。悟飯があんまり隠れんのうめえから意地悪しちまった」

 すると泣き声が少し治まり、

「……ホント……? ぼく、かくれんぼ上手?」

「ああ、うめえぞ。父ちゃん悟飯には勝てねえや!!」

 笑って言ってやると、

「ぼくおとうさんよりかくれんぼ上手なんだっ!!」

 嬉しそうに笑う。

 息子は自分に似てるって言われるけど、こんな顔は妻に似てるな。と思うと、胸の奥がホカホカする。

「悟飯がかくれんぼ上手だって、母ちゃんに教えてやんなきゃな」
「うんっ!!」

 泣いたカラスがもう笑った。

 息子を肩車しながら、我が家への道を帰って行った。

 家の前で妻が手を振りながら出迎えてくれるはずだ。


 end

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