過去拍手SS

□Instead
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「おとーさーんっ!!」

 息子は川から顔を出し、大きく手を振った。

 自分もそれを見て手を振る。
 
 どうやら大きな魚を捕まえたらしい。魚を抱えてこちらの方へ泳いでくる。

 あの泣き虫で小さな息子は、気が付けば立派な"男”になっていた。

 一度目の自分の死の時、息子は荒野に一人置いていかれ、そのままサバイバル生活をしていたらしい。

 そして、かつての自分の敵、今では良きライバルが息子を鍛えた。

 自分が生き返った時には戦士になり、師匠を助ける為に宇宙にまで出て行った。

 自分が宇宙で修行して留守にしている間は、妻を守っていてくれた。

 あの泣き虫な息子は今、こうして自分の代わりに食料の調達もこなしてくれている。

 ……もう、身体が思うように動かなくなった自分の代わりに……。

 裸で歩いてくる息子の身体は、死に別れた頃とは比べ物にならないくらい、筋肉も付いている。

「……もう……オメエに母ちゃん任せても大丈夫だな……」
「……なんですか? お父さん」
「何でもねえよ」

 微笑んで息子の髪をタオルで拭いてやる。

 擽ったそうにする仕草は幼い頃と変わっていない。

 自分の小さな呟きは息子には聞こえていなかった。

 でも本心だ。

 もう、永くはない自分の代わりに妻を守って欲しい。

「……すまねえな……悟飯……」

 お前達を置いて逝く事を―。

 涙が一筋、頬を伝った。


 end

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