過去拍手SS

□いい夫婦の日
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サイヤ人襲来前ver.


「キレイなお花だね、おとうさん」

 修行を休んで息子と裏山で遊んだ帰り道、息子が道端の花を見つけてこう言った。

「ホントだな」

 花の傍に座り込む息子と同じ目線で、その白い小さな花を見る。

「おかあさん、喜びそうだね」
「そうだな」

 妻は花が大好きだ。

「ねえおとうさん、今日は『いい夫婦の日』なんだって」
「『いい夫婦の日』?」

 息子の言った言葉を反芻する。

「うん。11月22日でいい夫婦」
「へえ、悟飯よく知ってるなあ!!」
「この間ご本で読んだの」

 自慢げに言う息子。息子は本当に本が大好きだ。妻が勉強を強要しているように見えるが、実は息子の意思も存在する。

「それでね、このお花、おかあさんにプレゼントしたらなって」
「プレゼント?」

「おとうさんとおかあさん、いい夫婦じゃないの?」

 不安げに見上げてくる息子に苦笑する。

「そうだな、父ちゃんと母ちゃんはいい夫婦だぞ?父ちゃんはそう思ってるぞ」

 ……妻はどう思ってるか知らないが……。

「だったらこのお花プレゼントしようよ!!」

 息子は急に立ち上がり、握りこぶしを作る。

「そうだなぁ……母ちゃんをここに連れてくるってどうだ?」
「どうして?」

 不思議そうな顔をしている。

「だって摘んだら花がかわいそうだろ?」

 小さな小さな白い花が一輪。自分にはその花が妻のように思えた。

 白くて小さくて、でも大地に根付いている、力強い花。

「ここに連れてきて見せてやろう?」

 そう言って息子の顔を覗き込むと、今までキョトンとしていた息子の顔が満面の笑みへと変わる。

「うん!!」

 早く家へ帰って妻を連れ出そう。

 自分達の企みに、息子は心を弾ませているようだった。


 きっと妻は喜んでくれるに違いない。

 『いい夫婦の日』に、妻にありったけの気持ちを込めて―。


 end
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