過去拍手SS
□最愛
1ページ/1ページ
やっと、自分のあるべき場所が見つかった、そんな気持ちだった。
最悪な初対面だったのに、今は一番求めるべき相手。
皮肉な運命の渦に巻き込まれた私達は、それでも本当の相手を間違わなかった。
どんなに遠い場所でも、どんなに立場が違えど、それでも出逢える奇跡。
違う星に生まれ落ちても、お互いを見つけ合える奇跡。
ああ幸せ。
この先、どんな運命が待ち受けていようとも、この背中とこの胸の温もりが、今の私の全てだ。
友人を、世界中を、この世を、全てを敵に回しても、この温もりがあれば何もいらない。
少女の頃、どうしてドラゴンボールなどで恋人を手に入れようとしたのだろう。
そのようなものが無くとも、こうして運命の人を手に入れられる。
かつて、自分がこの広い世界に連れ出した、この人の同胞の男の妻は、自分の力で運命の相手を手に入れた。
私は彼女が羨ましかった。
好きな人との約束の為ならば、どんな苦労もいとわない健気さ。
唯一無二の夫の為ならば、どんな試練にも耐える強さ。
私には無いものだった。
そんな風になれる事が羨ましかった。
でも、私も手に入れた。そう思える人が。
私も彼女のような苦労をするかも知れない。
でも構わない。
こんなにも、安らかに眠る彼の傍にいられるのならば。
やっと手に入れた、
最愛の人―。
end