過去拍手SS

□小さな寝息
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悟飯ver.


「おと〜さ〜ん……」

 寝室のベッドで妻を待っていると3歳になったばかりの息子が泣きながら入ってきた。

「どうした?悟飯」

 愚図る息子に声をかける。

「……こわいゆめみたの……」
「怖い夢?」

 息子はコクンと頷き、真っ赤になった目を擦っている。涙はもう止まっているようだ。

「どんな夢だ?」
「うんとね、お空から悪い人がやってきて、ぼくのことつれてくの」

 息子はそう言ってまた泣き出しそうになる。

「悟飯、おいで」

 そう声をかけると息子はピョコピョコと尻尾を揺らしながらこちらへやって来る。
 そして抱き抱え、ベッドに入れてやる。

「そんな悪い奴、父ちゃんがやっつけてやる。だから大丈夫だ」

 そう言ってニカッと笑ってやると、

「うんっ!!」
 
 息子は途端に笑顔になった。

「悟飯、今日は父ちゃんと母ちゃんと3人で寝るか?」
「いいの?」
「ああいいぞ!!」

 そう言うと息子は嬉しそうに布団に潜った。

 息子を一人で寝かすようにしているのは妻の教育方針と、毎夜の自分の我侭のせいだ。

 毎晩妻を独占しているのだ。たまには我慢して親子3人で寝るのも悪くはない。

 息子は一旦布団から顔を出し、自分の胸にしがみ付いてきた。

「おとうさんがいるから、もうこわくないよ」
「そっか?」
「うんっ!!」

 妻とはまた違う、小さくて柔らかい身体を撫でてやる。
 
 するとだんだん、その呼吸は規則的なものに変わってきた。

 この、自分達夫婦の大事な宝を、命に変えても守らねば。

 小さな寝息を聞きながら、改めてそう誓った。


 end
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