リクエスト・捧げもの
□君と歩む道
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どうしていいのかわからない。
君が大切すぎて。
君に嫌われたくないから、
どうしていいのかわからないんだ。
悟飯は悩んでいた。
難しい数式よりも、生態の知られていない生物の研究よりも、今まで自分が直面したどんな問題よりも難しいと思う。
他の人にとっては何て事ない事なんだろう。
だけども悟飯は今、セルよりも魔人ブウよりも、なによりも強敵と対面しようとしているのだ。
この問題は自分の力だけで解決したいのだが、どうにも八方塞がりだ。
誰かに相談しようか?
だけど、自分のまわりでこの問題に適した人間はいないように思う。
こういう問題を得意とするのはヤムチャだ。
しかしヤムチャは自分の望む答えの上を出しそうで恐ろしい。
クリリンは面白がるだろう。
天下一武道会の時にからかわれたし……。
ベジータは……話にならない。
母親のチチやブルマなどは異性なだけに話しづらい。
ともなると必然的に父親の悟空となるわけで……。
でも、悟空に話すのを躊躇っていたのはそういう問題に不向きだと思っていた。
が、しかし……。
「オメエの気持ちはよーくわかっぞ」
「え?お父さんにもわかるんですか?」
親に対して少々失礼だと思われる発言でも悟空は意に介せず。
「あれだろ? オメエ、ビーデルっちゅー娘が大事だから手が出せねえんだろ?」
「……そうです……」
「オラもそうだったかんな。オラ結婚してもただ一緒に暮らせばいいって思ってたしな。でも、何か無性にそれだけじゃ足んなくて、チチをめちゃくちゃにしそうで怖かった」
「お父さんもそうだったんですかっ!?」
「そうだぞ。オラ、チチに嫌われたらどうしようって。でもチチが触っていいっちゅーから……」
これ以上言ったらチチに殺される。悟空は口をつぐんだが、悟飯は全てを察したように顔を真っ赤にしていた。
「……でも、僕……どうしていいか……付き合ってもう2ヶ月になるのに、手すら繋げないなんて…僕はどこまで情けないのか……」
真っ赤になって呟く悟飯の悩みはどうも深刻らしい。大事すぎて何も出来ない気持ちは悟空にもよくわかる。
悟空としてもかわいい息子の為に何かしてやりたい気持ちもあるのだか、男ならこういう事は自分で解決しなければならない。
でも死に別れた時はまだ小さな子供だったのに、自分の知らぬ間にこういう事に悩む年頃になっていたのだ。悟空は感慨深いものを感じていたり……。
とりあえずヒントだけでも出してやらねば。
「でもオメエ、ビーデルとコイビトってヤツになったんだろ? 夫婦とコイビトはそういう事をすんのは当たり前だって言ってたぞ」
明け透けに言う悟空に悟飯は先程以上に赤面してしまった。
「……母さんは待ってたって言ってたな。オラが何にも知らなかったから悪かったんだけどよ、でも待たせて悪かったって思ってっぞ」
いつになく神妙な顔付きで言う悟空。
「オメエとビーデルはコイビトなんだろ?ビーデルは待ってんじゃねえか? ……母さんみたいに」
「……あ……」
自分と会っている時のビーデルは少し頬を染めてはにかんだように微笑んでいる。
その様子がとてもかわいくて余計に悟飯に火を付けているのだが、それでもビーデルの事が大事で、とても大切で、ビーデルを壊してしまうのではないか、何かをして嫌われてしまったらどうしようという気持ちが自分を抑えている。
ビーデルに聞こえてしまうのではないかと思うくらいの胸の鼓動で、手が触れそうな距離にいるととても緊張して身体が強張る。
だがせめて手を繋ごうとも手は緊張で汗を掻いていて、手を繋ぐ事を躊躇われた。
いつもそうやって二人の時間が終わるのだが、別れ際のビーデルはなんとなく寂しそうな、残念そうな顔をする。
自分はビーデルを待たせてるのだろうか……?
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