リクエスト・捧げもの

□君と歩む道
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「それによ……このまんまグズグズしてっと他のヤツに持ってかれちまうぞ」
「えっ!?」
 父の思いがけない言葉に悟飯は驚きの声を上げた。

「だってよ、ヤムチャみてみろよ。ブルマをべジータに持ってかれたようなモンだろ?」

 そうだった。ブルマのヤムチャを亡くした時の嘆きを考えると、後にヤムチャと別れてべジータとの間にトランクスが生まれるなんて思ってもみなかった。

 悟空も死んだり宇宙へ行ったり、散々チチを待たせた。

 他の男に取られていた可能性もあったのかも知れないと、今更のように思う。それを思うと心が乱れる思いに駆られるのだが、それでもチチが勝手な自分でも待っていてくれた事に安堵する。

 悟空は自分の伴侶がチチだった事がすごく幸せな事だったのだと痛感している。


 やはり息子の恋人のビーデルに妻のような思いをさせるのは忍びないし、何より悟飯に自分のような事はさせたくない。 
 
 それでもこれは悟飯が自分で解決すべき問題なのだ。

「こっからは自分で考えろ」
 考え込む悟飯に悟空はそう言って背中を叩いた。

 それでも不安げな悟飯に最後のアドバイス。
「お互い好き同士なら思ってる事は同じなんじゃねえか?」
 
「お互い好き同士なら……」
 悟飯はその言葉を反芻した。

「まあ頑張れよ。オメエなら大丈夫だ」
 そう言って立ち去る悟空。

「ありがとうございます、お父さんっ!!」
 悟飯がそう言うと、悟空は背中を向けたまま手を振った。

 
「悟空さ」
 リビングへ戻る途中チチが壁にもたれて意味ありげな笑みを浮かべて待っていた。

「何だよ、聞いてたんか?」

 自分も悟飯に若かりし頃の自分の心情を話している。悟空はチチに聞かれた事が何だか気恥ずかしく、少し赤くなりながら言った。

「聞こえてきたんだべ。でも悟飯も大人になったもんだな」
 チチは感慨深く言った。

「子供って、知らねえ間にデカくなってんだな」
「んだ。そのうち孫だって出来るんだべ」

 チチはそう言って悟空の逞しい腕に自分の腕を絡めてきた。

「孫かぁ……楽しみだなぁ。でもオラもう一人子供が欲しいなぁ!! 今度は女がいい」

 悟空は意味ありげな顔でチチの顔を覗き込む。    

「バッ、バカ!! 何を言ってるだ!!」
「なあなあ、もう一人作ろうぜ?」

 チチの腰を抱き寄せて耳元で囁く。

「じょ、冗談は止してくれっ!!」

 真っ赤になりながら、悟空から離れようとするチチ。

 そんなチチの様子に悟空はいつまで経ってもかわいいなぁ……なんて思っていたり。

「……それに悟空さ。おらもいつまでもおめえの我侭に付き合えねえだよ。悟空さはともかく、おらは……いつまでも若くねえんだから……」

 チチは赤くなりながら、歯切れが悪くそれを口にした。

「いいっ!?」
 悟空にとっては最後通告だ。

「……他に若い娘っ子探すだか?」
「そんなんいらねえよ!! チチじゃねえと意味ねえ!! いくつになってもチチだけだ!!」

 必死になって言う悟空。
 
 悟空にとって若い女がいい訳ではない。チチだから、チチでないと意味を成さない。どんなに年老いてしまっても、自分にはチチしかいないと思っている。
 
 チチは微笑み、
「そんな事も言えるようになっただか。そりゃ悟飯も大きくなるわけだ」

 そう笑いながら悟空の腕から逃れる。

「チチィ〜」

「……大丈夫だべ……まだまだ……付き合えるだよ」

 羞恥の為だろう。背中を向けたままそう言うチチの言葉に、悟空はパアッと顔を明るくする。

「じゃあさ、今晩子供作っか? いてっ!!」

 悟空はチチに思いっきり殴られていた。

 そんなやり取りが出来る事が悟空とチチにとっての幸せなのだ。

 そういう気持ちを悟飯にも味わって貰いたい。悟空とチチは心からそう思っていた。


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