リクエスト・捧げもの

□Everyone's favor
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 孫家に新しい家族がやってきた。
 
 男続きのこの家に、待望の女の子。

 長男・悟飯の第一子、パン。

 名も付けられ、パオズ山に戻ってきたパンのまわりには家族全員が集結していた。

「やっぱり小さいねえ」

 次男・悟天が感嘆の声をあげる。

「お前もこんなんだったんだぞ」

 悟飯はベビーベッドを覗き込んでいる悟天に言った。

 父が死んでいなかったから、自分が弟の父親代わりだった。悟飯は生まれたばかりの我が子に弟の姿も重ねて。

「オラ、悟飯がこんなだった頃は知ってっけど、悟天が生まれた時の事知らねえんだよな」

 この家の主・悟空はちょっとだけ申し訳なさげに言った。

「そうだったよね。僕の時は知らないんだよね……」
「でもその分、今はずっと一緒にいてるじゃねえか!!」
 そう言って悟天に抱きつく悟空。

「もうっやめてよお父さんっ!! 僕もう小さな子供じゃないって!!」
 真っ赤になって照れる悟天に、
「オメエはいつまでたっても子供だ」
 悟空はその頭をクシャクシャと撫でる。

 じゃれているそっくりな親子に、
「おらにはおめえが一番の子供だべ、悟空さ」

 嘆息しながら、悟空の妻・チチは言った。

「何言ってんだ?オラはオメエの旦那だぞ?」

 天然悟空に一同は苦笑いするしかなくて。

「でもよ、チチのおかげだな」

 悟空は小さなパンの頬を突付きながら言った。

「何言ってんだべ? パンちゃんを産んだのはビーデルさだべ。ビーデルさのおかげでねえか?」

 チチはキョトンとして言った。

「いえ、お母さん、お母さんのおかげですよ」
「そうですよお義母さん」

 悟飯夫婦は悟空の言わんとする意味を瞬時に理解した。

「オメエがオラんトコに来てくれなかったら、悟飯も悟天も生まれてなかったし、パンにも会えてなかったんだぞ」
「そうだよね。お母さんのおかげだよね」

 そっくりな親子は揃って言った。

「それを言うなら悟空さ。おめえを連れ出してくれたブルマさのおかげだべ」
「オラを拾ってくれたじっちゃんもだな」
「お父さんを地球に送ってくれたサイヤ人かも」

 口々に言う孫家の人々。

「牛魔王のおっちゃんとチチの母ちゃんだ」
「悟空さのおっ父とおっ母だべ」
「サタンさんじゃない?」

 そんな両親と弟に目を細め、悟飯は言った。

「みんなのおかげですよ」
「そうですよ。この子はみんなのおかげで生まれたんです」

 愛しげに我が子を見つめる若夫婦。

 今自分達がここで、そして幸せであるのは、今まで関わってきた人達のおかげ。

 この子は皆のおかげで生まれる事が出来たのだと、孫家の人々は感謝の気持ちでいっぱいだった。

「幸せになって欲しいわ」
「本当だね」

 孫家の天使はベビーベッドの上でスヤスヤと眠っている。

 ―幸せになって欲しい。

 この思いは孫家全員、いや、今までこの家に関わってきた人々も同じ気持ち。

 地球を救う為、戦闘に巻き込まれ続けてきたこの家の人々にやっと訪れた平和と、その象徴のようなこの天使。

 その場にいた皆が、この天使の寝顔を微笑みながら見つめていた。


 end

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