リクエスト・捧げもの

□We wish a new year
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一緒にいよう。
今年も来年も、
これから先もずっとずっと。
だって、家族だから―。



「ほら悟天、ベッドで寝るだよ」

 年が明けるまで起きてると駄々をこねた悟天だったが、どうにも睡魔に勝てずソファで眠りこけてしまった。

「やだぁ……お正月になるまで起きてるの……」

 そう言って隣に座ってた悟空の膝を抱え込んで身じろぎする。

「起きてねえべ……ほら悟天、おっ母がベッドまで連れてってやるから」
「やだったらやだ!!」

 かなり眠いはずなのに、それでも力いっぱい抵抗する悟天にチチは嘆息する。

「毎年すぐに寝ちまうくせに、何で今日はこんなに意固地になってるだ?」
「本当ですねぇ……毎年やっぱり睡魔に勝てなくて、すぐにベッドに行っちゃうのにね?」

 悟飯もいつもの大晦日を思い出す。
 悟天は一応年明けまで起きていると言うのだが、毎日寝ている時間になるとあっさり寝入ってしまう。
 それでチチか悟飯が連れて行こうとすると、それはあっさりと抱かれてベッドまで運ばれるのだ。

「年越しそばってのが食いたいんじゃねえか?」
「……悟空さ……さっき待ちきれずに食ったばかりでねえか……?」

 相変わらずな悟空に呆れるチチと苦笑いの悟飯。

「……でも……家族4人のお正月って初めてですね……」
「そういやそうだなぁ!!」

 悟飯の言葉に悟空が身を乗り出す。その拍子に膝の悟天が落ちそうになって慌てて姿勢を戻した。

 悟空が生き返ってから初めての年越し。
 7年目にして初めて家族が揃った。


「そういやさ、悟飯も一緒に年明けするって聞かなかったな」

 悟空が思い出したように言った。

「そうでしたっけ?」

 少し恥ずかしげな悟飯。

「そうだべ。それこそ今の悟天と一緒で駄々こねたべ。あれはピッコロさがいた頃だべな?」
「そうだったよな。いつもなら9時には寝る悟飯が珍しく起きてて、ピッコロと一緒に年明け迎えるんだって言ってよ」

 両親の思い出話に、ちょっと心当たりのある悟飯は顔を赤らめた。

「そんでよ、最初は嬉しいもんだからはしゃいでたんだけどよ、だんだん眠くなって今の悟天みたく寝ちまってさ」

 悟天の頭を撫でながら、悟空は続けた。
 
「チチが部屋に連れて行こうとすると、イヤだって駄々こねてさ。普段のオメエはめったに駄々なんかこねねえからビックリしちまった」
「そうだべなぁ……あの時の悟飯も妙に意固地だったべな」
「……そうでしたっけ……?」

 真っ赤な悟飯は俯きながら上目遣いで両親の方を見やる。

「おめえ、寝ちまったらピッコロにおめでとうが言えなくなるって言ってよ。そしたらあのピッコロがオメエを部屋まで運んでくれたんだ」
「あの時のピッコロさの嬉しそうな顔ったらなかったべ」

 笑いながら言う母に、悟飯は顔を更に真っ赤にしながら幼い頃の事を思い出した。

(あのままピッコロさんに運んで貰って、そしたら年が明けるまで一緒にいてやるって言ってくれたんだっけ。それで『おめでとう』が言えたんだ)


 悟飯は幼いながらもピッコロの孤独を知っていた。

 共に修行をし、共に生活をしているとはいえ、家族もなく、この地球でたった一人のナメック星人だったピッコロ。

 だから大好きなピッコロに『明けましておめでとう』を一番に言いたかった。

 それに一緒に年を越す事で、また一年一緒にいてくれると安心したかった。

 一緒に年を越せないと、ピッコロがどこかへ行ってしまう。
 あの頃の悟飯はそう不安に感じていた。

 でもあの時、ピッコロが『一緒にいてくれる』と言った事で、妙に安心し、その後安らかに眠れた。

 
「ま、ピッコロがオメエを連れてってくれたお陰でオラ達二人っきりで過ごせたんだけどよ」
「子供の前でこっ恥ずかしい事言うでねえよ悟空さっ!!」

 父が生き返ってから箍が外れたようにイチャついている両親は見なかった事にして、この弟は何故こんなにも意固地になっているのだろうと考える。

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