リクエスト・捧げもの

□Displeased father
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 孫悟飯はこのところ少しだけ機嫌が悪い。

 誰彼構わず当たり散らすような事は彼はしない。
 だけれど、何となくピリピリとした空気を発している。しかし彼は気をコントロール出来るので常人にはわからないくらいなのだが。

 隣に住む彼の父親は弟子との修行を終え、先程戻ってきた。
 その前も瞬間移動でしょっちゅう(母がご立腹なので)帰ってきてはいたのだが、この度全ての修行が終えたのだと言って帰ってきたのだった。


 その父・悟空が悟飯の元へ顔を出すなり言った。

「そういやパンはどうした?」

 その途端何故かその場の空気が凍った。

「あ、あの、今日ブラちゃんのところへ行くって……お義父さんが帰ってくるのがわかってたら行かなかったんでしょうけど……」

 悟飯の妻・ビーデルは引きつった笑みを浮かべながら悟空に返した。

「ふ〜ん、そうなんかぁ……ん? 悟飯、オメエどうしたんだ? 機嫌悪ぃんじゃねえか?気が変だぞ?」 

 今の今まで普通だった悟飯の気が急に張り詰めたようだった。

 そして先程同様にその場の空気が凍る。嫁のビーデルは何故か冷や汗を流しているし、妻のチチは睨み付けてくる。

 何だ?と思った途端、息子が口を開いた。

「いやだなぁ〜お父さん。機嫌なんか悪くはないですよ」

 何事もないように笑いながら悟飯は言ったが、悟空が「でもよ……」と言った途端にチチに太股を抓られた。

「いってーなー!! 何すんだよっ!?」
「悟空さ。そろそろ帰って風呂さ入るだよ。そんな汚ねえ身なりじゃ恥ずかしいべ」
「へ? さっき……いててててっ!?」

 耳を引っ張られそのまま玄関へと引き摺られる。

「じゃあビーデルさ。お邪魔しただな」
「いいえお義母さん。何のお構いもしませんで」

 ビーデルは玄関まで夫の両親を見送りに行くと悟飯もその後を付いてきた。

「お父さん、たまには修行付き合いますよ」
「お!! 珍しいな!! 悟飯とやるのは久しぶりだかんな!! オラ楽しみだぞ」

 ニコニコとしている悟飯だが、やはりその気は妙にピリピリとしている。

「なあ、悟飯、やっぱオメエ……」
「悟空さっ!! 行くべ!!」
「わかったって!! チチッ引っ張るなって!!」

 悟空はチチに耳を引っ張られながら隣の家へと帰って行った。

「変なお父さんとお母さんだね」
 ハハハと笑いながら書斎へ行く夫の後姿を見ながらビーデルが胸中で呟いた。

(変なのはあなたよ……)

 そして嘆息した。


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