リクエスト・捧げもの

□Displeased father
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「何だよチチ。オラ風呂へえったじゃねえか?」
「おめえ余計な事言うでねえよっ!!」

 玄関の扉を閉めるなりチチは叫んだ。

「へ?」

 素っ頓狂な声を出す悟空にチチは言った。

「今悟飯の前でパンちゃんの事は禁句だ」

 チチはピシッと人差し指を立てて言った。

「何でだ?」

 首を傾げる悟空にチチは言った。

「パンちゃん、恋をしてるんだべ」
「へ?」

「それも相手はおそらくトランクスだ」
「……そうなんか?」

 悟空はキョトンとした顔のままだった。

 昔馴染みのブルマと同胞のベジータとの子・トランクス。次男の親友。

「多分な。ビーデルさが言ってたべ。おらも見る限りトランクスだと思うべ」

 胸を張り自信満々に言うチチに悟空は言った。

「でもよ、トランクスは悟天より年上だぞ? パンより10歳以上年上じゃねえか?」
「バカだなぁ悟空さは。愛に年齢は関係ねえんだべ」

 手を胸の前で組んでうら若き乙女のように言うチチを見て、悟空は「そういうもんなんかぁ〜」と呟いた。

「とにかくっ悟飯の前でパンちゃんとトランクスの話はするでねえよ」
「何でだ?」

 そう言う悟空にチチは脱力する。

「あのな、娘を持つ父親ってのは複雑なんだ」
「そうなんか?」
「そうなんだべ……あ、悟空さ。おめえに娘がいるって想像してみるだ。おらの若い頃にそっくりな娘だべ」

 チチの若い頃にそっくりな娘……。

(……かわいいなぁ……)

 悟空はチチそっくりな自分の娘を想像し、顔が緩むのがわかった。

「その娘がだべ。他の男に取られるだよ? 悟空さ、どうする?」

 他の男……?

 チチそっくりな自分の娘が他の男に取られる?

「……許さねえ……」
「それだべ!!悟飯はパンちゃんを他の男に取られるのが嫌なんだべ」
「……そうなんかぁ……」

 想像だけなのに他の男に取られるなんて我慢できない。

 なるほど。

 悟空は悟飯の気持ちがほんの少しだけどわかった気がした。



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