リクエスト・捧げもの
□Madams' talk―奥様たちのHardship―
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―ある昼下がり。
「ベジータったらまた重力室壊しちゃってさぁ……」
ブルマに「お茶しない?」と誘われたチチは、悟空に頼んでカプセルコーポレーシャンまで瞬間移動で連れて来て貰った。
悟天もトランクスと楽しそうに遊んでいるし、悟空はベジータに捕まり手合わせをしていた。
「それでさぁ、早く直さないといけないのよ。あの通り王子様気質でしょ? 自分の思う通りにいかないと機嫌が悪いわけ。もう大変よ」
ソファーの背もたれに身体を預けて腕を組み、ブルマはその眉根を寄せて言った。
「ブルマさも苦労してるだなぁ……」
チチは出された最高級品の紅茶を口に含んで、ブルマの様子に相当の不満が溜まってる事を察した。だから今日は呼び出されたのだ。愚痴聞きに。
「そうなのよ〜。ホントわがままで困るのよ。ヘタしたらトランクスよりわがままよ」
「……それは大変だべな」
思わず苦笑する。子供よりもわがままな父親。それもベジータだから納得もできる。
「自分が食べたい時に食事が出来上がってないとまた機嫌が悪いし、自分のやりたいことを邪魔させると機嫌悪いし、とにかくいつも眉間に皺があるわけよ」
何となく想像できる。ベジータという人間は常に機嫌が悪いように思う。逆に機嫌のいい時などあるのだろうか?
「孫君はそういうわがまま言いそうにないわよね?」
「そうでもないだよ」
「そうなの!?」
思わず身を乗り出す。
「悟空さだってわがままだべ。あの通り働かねえし、ちょっと畑を手伝わせたら身体がなまっちまうって文句は言うし、人造人間が襲ってくるって時はなんだかんだでおらの反対押し切って悟飯に修行させたようなもんだし。いっつもわがまま押し通して自分の思う通りにするんだべ、悟空さって人は」
だんだんチチの眉根が寄ってきた。こちらもよっぽど不満があるのか。
「それにあの通り大飯食らいだべ? それなのに働かねえもんだから、うちの家計はいつも火の車だべ。おっ父の財産も底尽きかけてるし、おらが家庭菜園やってるのとサタンさんの口止め料ってので何とかやってるだよ」
「そ、それは大変ね……」
ブルマは世界一の富豪だからベジータがどんなに大飯食らいでも何とかやっていけているのだが、何と言っても孫家は育ち盛りの悟天と、青年になって食べる量も半端ではない悟飯、それにいつまで経っても食べ盛りの悟空がいるのだ。そのエンゲル係数を考えただけでもとんでもない数値だ。
「まぁ、悟空さも山で猪やらいろんな獣を獲ってきてくれるから、まだマシだけんど」
「そんな獣を料理するって考えただけでも凄いわ……」
ブルマはチチが猪を捌いているところを想像する。あの華奢な身体で猪や他の獣を捌いているところを。
「おらだって結婚したばっかりの頃は猪捌くなんてとんでもねえことだったけんど、そうしねえと食ってけねえから自然と身に付いちまって」
コロコロと笑いながら言うチチにブルマは少し背筋が寒くなるのを覚えた。何たる適応力。これもチチだからなのだろうか。
「でもどんな獣でも食ってみたら意外と美味いもんだからちょっとびっくりしちまったよ。料理の仕方で何でも美味くなるだよ」
確かにチチの料理はとんでもなく美味い。そんじょそこらのレストランのコックなんて足元にも及ばないだろう。それに獣も最高の料理に化けるのだから大したものだ。
「でもチチさんも元々はお嬢様じゃない? 孫君と結婚した当初、孫君あんなだから心配したわよ」
お嬢様と野生児。その組み合わせのカップルがうまくいくのかと、昔は心配したものだった。
「悟空さがあんなだってのは承知の上だべ。まぁ思ってた以上だったけんど。それ以上に悟空さが好きだったから何とかなったべな……っておら何言ってんだべか」
何でもない風に言った後に思わずとんでもないことを口走っていたと気付いたチチは真っ赤になった。
「そういうところがかわいいのよねえ。そりゃ孫君もどんな事をしても戻ってくるわけだ」
ケラケラと笑うブルマにチチは「やめてけれ」と真っ赤なまま抗議した時、部屋の扉が開いた。
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