リクエスト・捧げもの
□Madams' talk―奥様たちのHardship―
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「ブルマ、また重力室が壊れた。直しておけ」
ボロボロになったベジータが入口の外から言ってまた行こうとしたが、
「あれ? 悟空さは?」
「子供達と遊んでいる」
チチの問いかけにべジータは立ち止まりそっけなく答えた。
「アンタもたまには遊んであげなさいよ」
「遊んでやってるじゃないか」
事も無げにそう言うベジータだが、
「あれは遊ぶって言うんじゃないわよ……しごいてるだけじゃない」
そう言って嘆息するブルマを尻目に、ベジータは立ち去った。
「でもまぁ、最近はトランクスにトレーニングをつけるって言って構うことが増えてるのよ。父親の自覚ってヤツかしら?」
そう言うブルマの顔は嬉しそうに見えたのは気のせいではないだろう。
ベジータの事を嬉しそうに話すブルマがとてもキレイで……。
「でも孫君はしょっちゅう悟天君と遊んでそうよね?」
そんなブルマに見とれてしまっていたチチは急に声をかけられ少し焦ってしまった。
「あ、そ、そうだべな。悟空さ、しょっちゅう悟天に構ってるだな。多分、7年分取り戻そうとしてるんだべな、お互いに」
「……そうよねえ」
生まれていた事も知らなかった次男。7年間も構ってやれなかった分、悟空は今それを取り戻そうとしている。
悟天にしても生まれた時にはすでに亡かった父が思いがけず生き返って、今までの分、甘えようと必死なのだ。
悟空の姿が見えなくなると急に不安に感じ、帰ってくるとくっついて離れない。
悟空も悟天の好きなようにさせてはいるが、最近どうもいろんな意味で限界らしい。
なんせ悟飯が無理矢理引き離さなかったら寝る時まで一緒にいると言うのだから。
チチはその時の悟空の様子に少し顔を赤らめながら嘆息した。
でもブルマはその事に気付かなかったらしい。いつもなら目聡く突っ込んでくるのだが今は無かったので、チチは安心して話を続けた。
「本当は悟飯にも構ってやりてえみてえだけんど、なんせ悟飯はお年頃だべ? 勉強の他にも興味がある事あるみてえだし」
「ビーデルちゃんね」
ブルマは大きな目を見開いて嬉々として言った。
「もうそんなお年頃なのよねえ……孫君が初めてカメハウスに悟飯君を連れて来た時はホントに小さな子供でピーピー泣いてたのに……早いものよねえ」
今では立派な体躯の少年と言うより青年だ。
彼の成長は見守ってこれたとは思うが、なんせ父親があれだ。それでもその息子は一人前に恋などしているのだ。余計感慨深いものがある。
「言わねけんど、ビーデルさが好きだってすぐわかるだよ。態度に出てるだ」
時折溜息を吐いてボーっとしている。その名が出るだけでそわそわと落ち着かない。
その息子の様子を思い浮かべ笑いながら言うチチだが、そこには幼い頃から普通の子供とは違う生き方をしなくてはいけなかった息子が、普通の、思春期の高校生に成長したという安堵と喜びが見て取れた。
その様子にブルマはやっとこの一家にも平和が訪れたのだと、心の底から安堵した。
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