リクエスト・捧げもの
□小さな君と大きな約束
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「機嫌治してけれ。悟飯ちゃん……」
「……おとうさんはうそつきだ……」
キツネの子を見に行くと約束して3日、悟空はとうとう帰って来なかった。
「おっ父、修行に夢中になっちまってるんだべ……」
はあ……と大きな溜息を吐くチチは、握り拳を作り、真っ赤な顔でわなわなと震える悟飯の身体を抱き上げその膝に乗せる。その瞳には今にも溢れそうな涙が浮かんでいた。
「明日おっ母が連れてってやるから? な?」
「……」
完全に不貞腐れているようだ。その口はへの字になっている。
誰に似たのか妙なところで頑固な悟飯は大好きな母の言葉にすら返事をしない。
これは困った……と、チチが思案していると、玄関の扉が少し開いた。
「……た、たでえま……ちっと夢中になっちまって……」
申し訳なさそうに真っ黒で道着をボロボロにした悟空が頭を掻きながら入ってきた。
チチの膝で不貞腐れている悟飯は父の姿を見るなりその尻尾をピンッと立て、母の膝から飛び降りた。
そして悟空を睨み付けるとこう叫んだ。
「おとうさんなんかだいきらいっ!!」
「へ?」
呆然と立ちすくむ悟空を尻目に、悟飯はパタパタと駆けて子供部屋に篭もってしまった。
「悟飯ちゃんっ!!」
チチは息子を追い、子供部屋へと向かう。
取り残された悟空は未だ訳もわからず呆然としたまま。
「だ、大嫌い……?」
チチは悟飯を追う途中、悟空に振り返り、
「悟空さっ、悟飯ちゃんと約束さしたべっ!?」
そのまま子供部屋に入って行った。
「約束……? ……あっ!!」
悟空は悟飯との約束を思い出した。
「キツネ見に行くって……」
あちゃ〜……と頭を垂れて立ちすくんだ。
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