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□空を見上げて (DB)
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空を見上げて vol.9


「ベジータ?」

 寝室にべジータがいない。

 するとバルコニーに出る扉が開いていることに気が付いた。

 ブルマがそっと覗き見ると、ベジータは星空を見上げていた。

(まただ……)

 時折こんなことがある。

 一人星空を見上げているベジータの姿を見かけることがあった。

 その後姿がとても寂しげで、その背中が気になった。

 そして気が付けば、ブルマは彼に惹かれていた。

「ベジータ」

 ブルマはバルコニーに出て、ベジータの声をかける。

「……何だ?」

 振り向きもせず、見上げた視線を下ろすこともせず、ベジータはいつものぶっきらぼうな口調で返す。

「アンタ……自分の故郷のこと、考えてたでしょ?」
  
 その瞬間、ベジータは目を瞠って振り向いた。

 図星だ。そう思った。

 どこかばつの悪そうな顔のベジータにブルマは苦笑する。

 ブルマはベジータの傍に歩み寄り、その逞しい腕を取る。

「ねえベジータ……もしもね、今もね……」

 ブルマはかねてから聞いてみたいと思っていたことを聞いてみようと思った。

「アンタの惑星がまだあったら……やっぱり帰っちゃう?」

 今はこの地球にいてくれるが、もし、惑星ベジータが残っていたなら、ベジータはどうするのだろう。

「何だ?いきなり」
「ねえ、どうする?」

 ベジータは一拍置き、答えた。

「当たり前だろう」

 そうだろうな、とは思っていた。だから、もうひとつ、聞きたいことを聞こうと思った。

「……じゃあね……そのとき……私も連れてってくれる?」
「……」

 ブルマはその腕に頬を寄せ、そして視線を星空に向けた。

「……仕方がないからな」

 空を見上げながらぶっきらぼうに答えるベジータ。だけど、それはベジータの照れ隠しだと知っているから。

「あら?またそんな言い方しちゃって。素直じゃないわね?」

 ベジータの顔を覗き込んでわざと冷やかすように言うと、ムスッとした顔でブルマを見て言った。

「置いて行ってもどうせ宇宙船でも作って付いて来るつもりだろうが」
「まあね」

 ブルマが満面の笑みで返すと、ベジータは嘆息し、再び星空を見上げる。

 呆れたような顔でも、どこかしら楽しそうにも見える。

 そんな彼のことを、こんなに近くで感じられることが、ブルマは何よりも嬉しかった。

「凄いわよね」
「何がだ?」

 唐突なブルマの言葉にベジータは視線をブルマに移す。

「だってね、生まれた惑星は違うのに、今はこうして隣にいるのよ」
「……」
「子供だっているんだから」
「……そうだな……」

 ベジータの生まれ故郷がどこにあったのかはブルマは知らない。

 だけど、どんなに遠く生れ落ちても、必ず出会えていたと信じられる。


「私あのときね、すっごく怖い思いはしたけど、それでもナメック星に行ってよかったって思ってるのよ」
「……そうなのか?」
「だって、アンタに出会えたんだもの」

 ヤムチャの為に行ったナメック星。だけどそこで出会ってしまったベジータ。

 こうして敵であったベジータが生涯の伴侶になるなんて思いもしなかったけれど。

 そんな変わった出会いだって自分たちらしいとブルマは思う。

「ありがとうね。地球にいてくれて」
「……ああ」

 もし、惑星ベジータが消滅していなかったら。

 こうして出会うことが出来たのだろうか?

 そんなことを考えても仕方が無いけど。

 それでもきっと。いろんな道のりを経て、出会えていたはずだ。

 ブルマはそう思い、ベジータの腕に頬を寄せた。


 end
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