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□空を見上げて (空飛ぶ広報室)
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空を見上げて(空飛ぶ広報室)vol.2
スマートフォンが震えた。
差出人は珠輝。
「なんだ?」
メールを開くと画像添付付き。
『これ、空井さんに送ってください』
画像を見ると、寂しげに空を見上げた同期の稲葉リカ……現・空井リカの姿。
「えらく寂しそうだねえ〜」
そう呟いて苦笑する。
稲葉が空を見上げるときは松島の夫のことを想っているとき。本人が口に出さなくても、そんなこと周知の事実だ。
思わずフッと笑みが出る。
「珠輝の指示通り、メール送っとこうかね」
珠輝から送られた添付画像に指示通りのメッセージ。
『寂しいです。すごく会いたい』
それから変な誤解をされると面倒なので補足。
『珠輝からのプレゼント。空井くんに送るように言われました。稲葉、よくこういう顔してるよ。余計なお世話だったかな?』
余計なお世話。そんなことを思いつつもこの夫婦にはついお節介をやいてしまうのはこの夫婦に関わってしまった人間たちの性なのかも知れない。
あの珠輝も、きっとその一人になってしまったのだろう。
もちろん、自分も。
「はい送信っと」
それから珠輝に送信したと報告のメールを打つ。
珠輝に送信をして暫くしてからメールが届いた。
相手は空井大祐。
『藤枝さん、余計なお世話なんかじゃないです。リカには藤枝さんや佐藤さんがいてくれるから僕も安心です。本当にありがとうございます。佐藤さんにもいつもありがとうとお伝え下さい。』
「ハハッ、律儀だねえ〜」
本当に安心しているかはともかく、こういうところは彼らしい。
バルコニーに出て空を見上げる。
時間をかけてやっと繋がった二人だ。
「末永く幸せでいろよ〜」
胸中であの夫婦に叫んだ。
end