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□空を見上げて (空飛ぶ広報室)
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空を見上げて(空飛ぶ広報室)vol.3


 休憩中携帯が鳴った。
 メールだった。

 差出人は藤枝敏生。妻の同期の男だ。

「藤枝さん?珍しいな……まさか……」
 
 妻に何かあったのだろうか?
 慌ててメールを開く。

『珠輝からのプレゼント。空井くんに送るように言われました。稲葉、よくこういう顔してるよ。余計なお世話だったかな?』

『寂しいです。すごく会いたい』
 そう書かれたメールに添付された画像には寂しげな表情で空を見上げる妻の姿。
 その姿に胸が痛んだ。

 会ったときの彼女は満面の笑顔を向けてくれる。
 帰るときも涙を堪えるようにではあるが笑顔で見送ってくれるし、彼女が帰るときもそうだ。

 ここまで寂しげな顔は見せてくれたことはない。
 きっと無理して、見せないようにしてくれているのだろう。

 多分アングルからして妻の後輩の隠し撮りで、この言葉も妻が言ったものではないだろう。
 だけど、この表情が全てを物語っている。

 どれだけ寂しい思いをさせているんだろうか……。

 そう思うと、どうしようもなく会いたい気持ちが込み上げる。

 そして妻にメールを送る。

『俺も寂しいです。こんなリカを見せられたらいますぐ会いに行きたい。でも週末には帰るんで待ってて下さい。愛してます。大祐』

 週末まであと三日。
 会えなかった半年と二年、それに比べれば何てことない。

 以前は許されなかった愛の言葉も、今は遠慮することなく告げることが出来る。ただ照れくさくてなかなか口に出すことは出来ないけれど。
 そのストレートな言葉に今頃固まっているかも知れない。

 それからこのプレゼントを届けてくれた人にもメールを送る。

『藤枝さん、余計なお世話なんかじゃないです。リカには藤枝さんや佐藤さんがいてくれるから僕も安心です。本当にありがとうございます。佐藤さんにもいつもありがとうとお伝え下さい。』

 自分の知らない妻を知っている彼らにほんの少しの嫉妬を覚えつつ、それでも自分たちを見守っていてくれることに感謝する。

 外に出て空を見上げる。

 この空は繋がっている。
 妻がいる東京と、どこまでもずっと。
 この空が繋がっているように、自分たちも繋がっている。

 携帯が鳴る。
 妻からメールだ。

『大祐さん。珠輝と藤枝にやられちゃいました。でも大祐さんから嬉しい言葉を貰えたから感謝かな?早く会いたいけど、大祐さんの言葉のお陰で週末まで頑張れます。私も愛してます。リカ』

 あーもうー……何でこんなに可愛いこと言ってくれちゃうかなあ……。

 思わず顔の筋肉が緩むのを感じ、再び空を見上げる。

 そこにはどこまでも続く青空が広がっていた。

 この空の先には妻がいる。
 
 それだけで。
 これからも頑張れる。


 end
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