お題・英単語

□decision-決心-
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「……俺……覚悟決めた」
「先輩?」
「言う。すみれさんにはっきりと俺の気持ち言うよ。怖がってちゃ何にも始まらない。ぜってえやってやっかんな!!」
「……先輩」
 きっとコイツは握り拳を作って「頑張って下さい!!」とか言うんだろう。
「まだ覚悟決めてなかったんですか?」
「へ?」
「今までの話の流れじゃとっくに決めてるもんだと思ってたんですけど。ホント、相変わらずですねえ〜」
「へ?」
 思いがけないお言葉。
 一瞬にして脱力する。
「お前さ、ここは『頑張って下さい!!応援してます!!』じゃねえの?」
「今更?もうね、ちゃっちゃと済ませて下さいね。なんなら今からいっちゃいますか?」
「……いえ……それは……」
「まあ、すみれさんも若くないんで早く済ませちゃって下さいね」
「だあれが若くないって〜?」
「へ?」 
 聞き覚えのある声して真下は素っ頓狂な声を出す。何となく恐る恐る振り返ると……。
「す、すみれさんっ!?」
 そこには噂のすみれさんが仁王立ちしていた。
「へへ。来ちゃいました」
「ゆ、雪乃!?」
 すみれさんの後ろから雪乃さんが顔を出した。
「この人、青島さんと飲みに行くって言うから、すみれさん誘ってきたんですよ」
「そ、そうなの?」
「てかさ、あたしがもう若くないって何よ?」
 仁王立ちに腕組み。それに眉を吊り上げて真下と俺を睨み付ける。
「え?いや、その……」
「すみれさん……どこから聞いてたの?」
 恐る恐る聞いてみる。聞かれているところによってはちょっと情けないことになってしまう。
「ずばり、そこからよ」
「若くない?」
「連呼しないで」
「こりゃ失敬」

 よかった……俺の覚悟を聞かれてたわけじゃなさそうだ。
 どさくさでバレるほど情けないものはないよな……。

「で?何の話よ?」
「べ、別に……」
「怪しいわねえ〜聞かれちゃマズイ話でもしてたわけ?」

 してました。こんな形で君に聞かれたくない話をしてました。

「いや……別に普通の話だよ?」
「……ホントに?」
「怪しいですよ、すみれさん。男二人で変な話してたに決まってますよ」
 雪乃さんはキッと真下と俺を睨み付ける。
「そんなことないよ雪乃っ!!」
「さあ、どうだか」
 この様子でここの夫婦の力関係はわかる。てか、そんなこと前からわかっていたけど。
「あ!! てかもうこんな時間っ!! そろそろ帰らないと!! 子供たち待たせてるんでしょっ?」
「子供たちならお義母さんに預かって貰ってますけど?」
 雪乃さんにそう言うとしれっと言われた。
「でもね、早く帰ってあげないと」
「青島さん、どうしたんですか?」
 怪訝そうな目を向けられている。そりゃそうだよな。不自然だよな。早く帰そうとしてんだからな。
「別に、どうもしないよ?」
「そうかしら……?」
 すみれさんも雪乃さんと同じような目を向けている。
「そうだよ雪乃。子供たちも待ってるから帰ろうか!!」
「……怪しい」
「怪しくない怪しくない、さあ帰ろう」
「……うん」
 雪乃さんは渋々といった風だ。
 そりゃそうか。せっかく来たのにすぐ帰されるんだもんな。
 ひょっとしたらちょっとは息抜きしたかったのかな?なら悪いことしたかな。

「じゃ、青島さん、すみれさんをちゃんと送り届けて下さいね。よろしくお願いします」
「はっお任せ下さい」
 真下の言葉にわざとらしく敬礼をする。
「何それ?」
「だって署長だし?」
「何か白々しいわね」
「気のせい気のせい」
「そう?」
「じゃあ帰ろっか」
「はいはい」

 店の前で真下夫妻と別れる。
 その際、雪乃さんにバレないように小さく何度もガッツポーズを作ってこちらに何かを訴える真下は見なかったことにして、すみれさんをアパートまで送るために二人で連れ立って歩き出した。



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