お題・英単語

□kiss-キスをする-
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『こ、こうか?』
『んだ』

 最初のキスは触れるだけだった。

 チチに乞われるまま、言う通りに唇に唇をくっつけた。

 チチのピンク色の唇はプニッと弾力があって柔らかくて、何だか甘い味がしたような気がした。

 それからこの行為が少し悪いことのようでいて、だけどとてもいいことのように思えて、だんだんとくせになりそうに思えて。

 そして実際にくせになって。

 出掛けるときも帰ってきたときも、自分たちはキスを交わすようになった。

 最初は恐々だったのに、自然に出来るようになるのにそんなに時間はかからなかった。


『愛してるだよ』
『アイシテルって何だ?』
『こういうことだ』

 天下一武道会で再会したあのとき、そう言う自分にチチは頬にキスをしてきた。

 あのときは何のことだかよくわからなかったけれど、今ではその意味がよくわかる。



「チチ、けえったぞ」
「おかーさーんっ、ただいまーっ!!」
「おかえり」

 生き返って、死ぬ前とは変わらない生活。

 朝起きて修行して、またこの家に帰ってきて。

 だけど子供たちがいるから、新婚の頃のようにとはいかないけれど。

「悟空さも悟天も早く風呂さは入ってくるだよ」
「おう」
「は〜いっ!!」

 自分の修行についてきて、真っ黒に汚れた悟天が手を上げて返事をする姿を見て一つ微笑むと、悟天に先に風呂場へ行かせ自分は台所のチチの元へ行く。

「今日のメシは何だ?」
「もう悟空さ、泥だらけで台所に入ってくんじゃ……」

 お小言を言うチチの唇に掠めるだけのキスをする。

「ヘヘッ、ただいまのチュー」
「もう……悟空さったら……」

 困ったように、だけど顔を真っ赤にして笑うチチにもう一度キスをする。

「子供たちがいるだよ」
「大丈夫だって。見てねえから」

 そう言って笑うと、チチは少し眉を吊り上げる。

「そう言う問題じゃねえだよ」
「別にオラは見られたっていいんだぜ?だってよ、父ちゃんと母ちゃんは仲良しなんだって言ってるようなもんだしよ」
「見られていいわけねえでねえかっ!!」

 チチはそう言ってギャアギャアと怒り出す。そんなチチの声を笑いながら聞いていると悟天が風呂場から声をかけてきた。

「おとーさーんっ、またおかあさんとケンカしてるの〜?」
「ケンカじゃねえぞ。仲良くしてるだけだ」

 そう叫んで笑いながらチチを見下ろすと真っ赤な顔で頬を膨らませている。

 その唇にまたキスをする。

「もう……」

 チチは真っ赤な顔のまま微笑んだ。


 いつもチチにキスをするときはありったけの思いを乗せる。

 『アイシテル』という言葉の意味を教えてくれた最愛の人物に無限の愛を。

  
 end

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