雨の日の唄

□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄10


「悟飯と悟天、日曜までブルマん家泊まるって」

 ウキウキとしながら台所のチチに声をかける。

「え? 何だべ? そんなのご迷惑でねえだか?」

 チチは料理をしながら振り向いて言った。

「ブルマが悟飯達を新しいカプセルのモニター? っての? それに貸して欲しいって」
「そうだか……なら後でブルマさに電話しとかねばな」

 チチはそう言って、またまな板に向き直った。
 
 ……何だかじれったい……

「なあなあチチィ、今日からオラ達二人っきりだぞ」
 
 チチの腰に手を添えると、

「悟空さっ!! 包丁使ってるのが見えねえだかっ!?」

 もの凄い剣幕で怒鳴った。

「す、すまねえっ!!」

 すぐさま手を離し、一歩後退った。

 ほぼ条件反射だ。どんな強敵よりもチチに怒鳴られる方が怖い。

 もう一喝くるかなぁ? ……なんて思っていたのだけど、

「……後で……だから……大人しく待っててけろ……」

 まな板に向かったままそう呟くチチ。

 予想外の反応に必要以上にテンションが上がる。

「何だよ、オメエも嬉しいんじゃねえか!! 素直じゃねえなあ!!」

 からかうように言うと、

「もうっ!! 悟空さなんか知らねえっ!!」

 真っ赤になって怒鳴ってくる。

 ああ、もうたまんねえくれえかわいい。

 いくら年を重ねても、2人の息子がいても、チチは新婚の頃とちっとも変わらない。

 自分の所に来たあの頃のままだ。

「悪かったって!! 悟飯達には悪いけど、オラは嬉しいんだ。オメエと二人っきりなんて新婚の頃みてえでよ」

 そう言うとチチは顔を真っ赤にしたまま黙った。

 照れてるな。と思うと余計に愛しさが増す。


 雨はまだまだ降っている。

 誰も自分達の邪魔はしない。


 end

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