雨の日の唄

□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄15


『サタンさん、カプセルコーポレーションのブルマさんからお電話です』

 精神統一という名目で自室のソファでゴロゴロしていると、内線で呼び出された。

「わかった。繋いでくれ」

 自室には一人だから誰にも見られるわけではないが、今までの虚勢のお陰でついつい条件反射の如く姿勢を正してしまった。

「もしもし」

『サタンさん? ブルマです』

 電話の相手は自分が頭が上がらない人物の一人だった。

「これはこれはブルマさん!! お電話頂けるなんて光栄です!!」

 とにかく下手に出る。

 こんな姿、世間に見せられたものではない。

『大袈裟ですわね。実はお願いがあって』
「ブルマさんのお願いでしたら何でもお受け致します。何なりと!!」

 この人物とその仲間には借りというか弱みがある。言う事を聞かねば後で恐ろしい事にもなりかねない。

『ビーデルちゃん、日曜までお預かりしたいんですの』
「へ?」

 ビーデルを? どうして?

『私が今度開発したカプセルのモニターになって貰いたいんです』
「……モニターですか……?」

『もちろん危険な事はないわ。それに悟飯君もうちのトランクスも一緒だから』

 悟飯っ!? 自分が一番頭が上がらない孫悟空さんの息子っ!!

 それにトランクスと言えば、あのめちゃくちゃ強いチビッコッ!!

『サタンさん?』

 絶句している自分に電話相手の女性は怪訝そうに声をかけてくる。

「……も、もちろんっ、ビ、ビーデルで役に立つのであれば、存分にお使い下さいっ!!」

『そう? よかった。サタンさんに反対されるかもってビーデルちゃん心配してたから』
「とんでもございませんっ!! ブルマさんの頼みとあらば如何様な事でもお聞き致しますっ!!」

 少々大袈裟ともとれる発言だが、今の自分には本音だった。

『じゃあお預かりしますわね』

 電話相手はそう言って電話を切った。

「はぁ〜……」

 思わず大きな溜息が出る。

 ……ビーデル……。自分より強い相手でないと結婚どころか交際も許すつもりはなかった。しかし…

 確実に自分より強い相手に出会ってしまった。しかも真の地球の救世主の息子に……。

 彼自身の力も相当なものだ。自分など遠く及ばない。それどころか彼らの仲間の誰一人、下手すれば彼の母親(聞いたところによるとあの牛魔王の娘らしい)にすら勝てないかも知れない……。

「……ビーデル……思いがけず早く嫁に行くのかも知れない……」

 何だか切ないような、でも、あれだけ強い人達が娘(と自分)を守ってくれるかも知れないという、何とも言えない安心感も覚えた。


 妙な心持で窓の外を見ると、今朝から降り続いている雨が、まだしとしとと降っていた。


 end

 
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