雨の日の唄

□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄17


「そうなのよ〜。」

 妻が先程かかってきた電話(永遠のライバルの妻からと思われる)に出てからすでに30分、その受話器は一向に置かれる気配は感じられない。

 息子も庭のカプセルでキャンプをしていてあと2日は出てこないし、妻の両親も旅行でいないので、しばらくは夫婦水入らずで過ごそうと言ったのは妻の方なのに。
 

 何故自分はほったらかしにされているのだ?

 
 リビングのソファに腰掛け、向かいのソファでずっと話し続ける妻をジロリと睨むが、妻は話に夢中で気付きもしない。

(本当にいい根性をしているな…このオレ様を待たせるなんて…。)

 と胸中で毒づくが、昔、出会って間もなかった頃、自分が誰であろうと態度を変えなかったところもこの女のいいところだと思っている自分もいて。

(まあ、最初は怯えてはいたがな…。)

 なんて考えていたら少し笑みを浮かべていたらしい。

「何よアンタ、気持ち悪いわね。何一人で笑ってんのよ?」

 すでに電話を切っていた妻が毒づいた。

「な、何でもないっ!!というか、いつまで電話してるんだっ!?全く、女ってヤツは、何でこうも…」
「はい、おしまい。」

 妻はそう言って自分の顔にその整った顔を近づける。

「なっ、何をっ!?んっ!!」

 自分の口は妻の唇によって塞がれていた。

「何か文句ある?」

 そう言ってその口角を上げて微笑む。

「…何て女だ…。」

 きっと自分の顔は真っ赤になっている。

 でもこの自分が唯一認めた女だ。

 この女になら負けてもいいと思える自分がいる。

 負けるのが嫌いな自分でも、負けてもいいなんて。

 でも、こんな感情を持つのも、悪くないと思える自分がいるのも確かだ。


 照れ隠しで窓の外に顔を向ける。

 外は昨日から降り続いている雨がまだ降っていた。

 こんな日は妻と二人でゆっくりするのもいいと思えた。


 end
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