雨の日の唄
□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄18
「ありゃ、降ってきちまった。」
妻と1ヶ月振りの買い物に来ていたら、雨が降ってきた。
「あ、オレ傘忘れた。」
「ほら、持ってきたよ。」
妻はカバンの中から折りたたみ傘を取り出す。
「お、さすが18号だな!!」
「大袈裟なんだよ。」
妻はそっけなく言うけれど、耳まで赤くなっているところを見逃さなかった。
傘を開き、自分が荷物を持ち妻が傘を差す。自分達の身長差を考えてもこうするしかなかった。
町を二人で歩く。娘は昼寝をしていたので置いてきた。自分の師匠もいるし、もし起きて愚図ってもウミガメが面倒をみてくれるだろう。
―しかし、今日もやたらと視線を感じる。
自分達がまわりから奇異な存在として映っている事は、今までの経験上わかっていた。
チビでどっちかっていうとパッとしないオヤジに、金髪の絶世の美女。
その二人が並んで歩いているのだ。時には幼い子供も連れて。
(そりゃ変に映るよな…。)
心中で苦笑する。
でも慣れてるとはいえ、やっぱりこの視線は堪える。
(つり合わないよなぁ…。)
思わず大きな溜息を吐く。
「どうした?」
頭の上から妻が声をかけてくる。
「…いや…こんなチビなオヤジと一緒に歩くの、やっぱり…。」
オレ、どんな顔してるんだろう?
「…バーカ。」
「へ?」
「何を変な事気にしてるんだい?他人なんか関係ない。」
「18号…。」
下から見上げる18号の顔はやっぱり少し赤かった。
妻と二人、こうして相合傘で歩く。
幸せだ。
ここに娘がいないのが少し残念だけど。でもたまに二人っきりもいいな。
「さあ、マーロンにお土産を買って帰るよ。きっと起きて愚図ってるからね。」
「おう!!」
二人でおもちゃ屋までの道を並んで歩いた。
何も恥じる事はない。
お互いがお互い必要としているのだから―。
end