雨の日の唄
□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄20
「うわーんっ!!」
「頼むから泣き止んでくれぇーっ!!」
弟子夫婦が買い物に出ている間、昼寝をしている娘をみていてくれと頼まれた。
しばらくは大人しく眠っていた。
なのでテレビで踊っているピチピチギャルをウハウハで観ていたのだが…。
突然…
「ギャーッ!!」
悲鳴にも似た、子供の泣き声がした。
「うおっ!?何事じゃっ!?」
心臓が止まるかと思った。こんな老体、いつ心臓が止まってもおかしくないのじゃが、あと100年はピチピチギャルが見たいからあまり驚かして欲しくはないのじゃがの。
「武天老師様っ!!マーロンちゃんが起きてしまいましたよっ!!」
ペットのウミガメが慌てて這ってくる。
「クリリン達はまだ帰って来ないのかっ!?」
気はまだ近付いて来ない。
「クリリンさん達が行った町の方は午後から雨って言ってましたから、雨宿りでもしているのかも知れませんよ。」
「う〜ん、困ったのう…。」
弟子の娘はまだ大泣きしている。
両親に置いて行かれたのだから仕方がないが…。
幼子を腕に抱き、頭を撫でる。
それにしても、あの弟子がの…。
今ではすっかり父親だ。
もう一人の、とうに人智を超えてしまった弟子は、予想に反して早々に父親になった。
それもかつての自分の弟子の娘を公衆の面前で娶り、そして子を成した事を4年も知らせず、家族だけの時間を大事にしていたようだ。
初めて子を連れて来た時の父親振りには驚かされたものだ。
その弟子も元々は自分の弟子の孫だから、その弟子自体が孫のようなものだったのだが…。その弟子の二人の息子も弟子の妻の父親、かつての自分の弟子の孫になる。
(ワシには孫が何人いてるのかの?)
弟子もその妻も自分にとっては孫のようなもの。
その弟子の息子らも、もう一人の弟子の娘も孫のようなもの。
「よしよしマーロン、もう泣くでないぞ、ジジイもウミガメもいるからの。」
泣いている娘を抱き上げる。
そしてウミガメの甲羅に乗せる。
すると機嫌も良くなり、キャッキャッと笑い出す。
「…ホッとしたの…。」
「そうですね…。私今、悟飯さんを初めてこの背に乗せた時の事を思い出しました。」
「そうじゃのう…。」
あの時、初めて弟子がここに息子を連れて来た時、今のマーロンのように泣き虫だった。
それが…すっかり逞しくなった。
そしてその弟は父親を知らずに育った。
しかし、その容姿は父親の幼い頃に瓜二つで、皆で息を飲んだのを覚えている。
そしてその実力は底知れぬものだった。
(もうみんなワシを超えたの…。)
寂しいような、それでいて嬉しいような。
でも…
孫達を見ていると、嬉しい気持ちが勝る。
これからも、この孫達を見守っていこうと心に誓った。
end