雨の日の唄
□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄21
「ヤムチャさまぁ〜、雨降ってきましたよ〜。」
「…本当だな…。」
窓の外を見ると雨が降っていた。
少しアンニュイな気分で窓の外を眺める。
…昨日、彼女にフラレれた…。
これで何度目だろう…?
でも、それほどショックじゃないのは、きっと過去の失恋が尾を引いているからだろう。
本気の恋をしたのは、彼女だけだ。
女嫌いだった自分が初めて恋をした、気の強い、でも優しい彼女。
(本気で好きだったんだけどな…。)
浮気性な自分を見限り、かつての侵略者に恋をした彼女。
自分が浮気を繰り返し、そんな時に寂しそうだった異星人とつい何となく…などと強がってはいたが、本当は彼女がアイツに惹かれていた事は自分が一番知っていた。
(オレが…一番見ていたんだ…。)
一番見ていたから、彼女の気持ちの移り変わりにもすぐさま気付いてしまった。
彼女は恋をしていた。
きっと彼女も自分の気持ちに気付いていなかった頃から、自分は気付いていた。
それだけ、彼女を見ていたのに…。
(オレが悪いんだけどな…。)
彼女と別れた日も雨が降っていた。
あの日から雨の日が苦手だ。
あれから何度も恋をしたけれど、彼女以上の女はいない。
…恋をしたつもりだったのか…。
彼女以上の女がいない以上、それは恋ではないのだから。
今でも彼女は近くにいる。
友人としてでも、彼女の傍にいたかった。
あの異星人と幸せに暮らしている彼女を見るのは辛いけれど、それでも彼女が幸せならばいいと思える自分もいる。
もう恋ではなく愛だ。
でも、見守る愛があってもいい。
「ヤムチャさま、静かですね。」
自分にずっと付き従っているネコが言った。
「…そうだな…。」
あんなに苦手な雨だったが、今は何だか優しい雨に思える。
まるで慰めてくれているかのような優しい雨。
次の恋がどうなるかはわからない。
―でも。
自分は今でも十分幸せなんだと、この雨は教えてくれた気がした。
end