雨の日の唄
□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄24
「ああ〜ビーデル〜…。」
窓からビーデルと孫悟飯が並んで帰っていく姿を眺める。
「往生際が悪いわね。」
そんな自分の隣でイレーザが呟く。
「よりによって孫悟飯…。」
「シャプナーには勝ちめ無いわね。」
「…ハッキリ言うな…。」
「事実を言ったまでよ。」
「…。」
自分はずっとビーデルが好きだったが、あの転入生が来てから全てが変わった…ような気がする…。
「悟飯君が転入して来なくても、アンタとは何も無かったと思うわ。」
「なっ!?」
何で自分が考えてる事がわかるんだっ!?イレーザ侮りがたしっ!!
「…アンタの考えてる事なんて私じゃなくてもわかるわよ…。」
またもっ!?
「…だから…顔に出てるんだってば…。」
半眼で呟くイレーザ。
「どっちにしても相手が悪いわ。悟飯君、頭いいし運動神経抜群だし強いし、見た目もいいし何たって優しいし。」
「…聞きたくもない…。」
悟飯はイレーザが言った通りのヤツだ。非の打ち所のないヤツだ。
もちろん、友人としても申し分の無いヤツなのだ。
しかもグレートサイヤマンだったとは…。
「いやっ、まだオレにもチャンスは…。」
「無いわね。」
「何でっ!?」
イレーザの顔は完全に呆れている。
「アンタつくづくおめでたいわね。あの二人、どう見ても両思いよ。」
「そうなのかっ!?」
「アンタの頭の中って自分に都合のいい事ばっかりに変換されてるのかしら…?」
イレーザの呟きはほぼぼやきと言っていいのかも知れない。
「諦めなさい。きっとアンタに似合った子がいるわよ。…この広い世界のどこかには。」
慰めになっているのかいないのか…。
傘を差して並んで歩く二人の後姿を思い出す。
「…お似合いだったわねえ…。」
「…そうだな…。」
思わず相槌を打つ。
「…諦めた方がいいのかな…?」
「…アンタにもいい事あるわよ。…私にもね…。」
イレーザはそう言って微笑んだ。
その顔は少し寂しげに見えた。
雨の降りしきるこの日、今日は自分達の失恋記念日だ―。
end