雨の日の唄
□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄25
「兄ちゃん、言っちゃダメだって。」
「へ?」
悟天の突然の発言に、オレは素っ頓狂な声を出してしまった。
「ここで“れんあい”って言っちゃダメなんだって。」
「…お前…何言ったの…?」
座り込んで木の棒で何やら落書きをしている悟天に訊ねた。
「兄ちゃんとビーデルおねえちゃんがれんあいしてるって。」
「…お前…ストレートすぎだろ…?」
キョトンとしてる悟天に溜息が出る。
「兄ちゃん、超サイヤ人になっちゃうかと思っちゃった。」
「え?」
「すっごい怖かった。でも笑ってるんだ。笑いながら気がブワッって。」
悟天が腕を広げて気の大きさを表現した。
「あんな兄ちゃん見た事なかったよ。」
聞いた事がある…。
昔、セルってヤツと悟飯さんが戦った時、超サイヤ人2になった悟飯さん、笑いながら「まだまだ」って言って痛ぶったって…。
その様子が普段の温厚で戦う事が嫌いな悟飯さんとはかけ離れていて、あの悟空おじさんでさえ戸惑ってたって…。
そう言えばさっき一瞬だけ、一瞬だけだけど、悟飯さんの気が膨らんだ気がする。
「…トランクスくん?」
呆然としている自分の顔を悟天は覗き込む。
「どうしたの?」
知らぬが仏ってこの事を言うのか?
今、悟飯さんに会うの…怖えよ…。
少しだけど、身震いがした。
その時、急にとんでもない気が近付いてくるのがわかった。
隣を見ると、さっきまでいたはずの悟天がいない。
「…ご、悟天…?」
…そして背後には…今まで感じた事のなかった恐怖が迫っていた…。
end