雨の日の唄
□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄26
「…トランクス…。」
「…は、はい…。」
背後に迫る、危機…。
パパよりもママよりも魔人ブウよりも恐ろしいものがあるとすれば、それは今現在、自分の背後にまで迫る、その半端無く気を膨らませた親友の兄なんだと思う。
「…トランクス…悟天に何を吹き込んだんだい…?」
「…え?な、何のこと?」
オレは白々しく答える。そんなことしたって無駄だってわかってるのに…。どうしても無駄な悪あがきをしてしまう。
「…。だから…悟天に余計な事を教えただろう?」
顔は笑ってる。それは間違いない。…なのに…この寒々しさと恐怖心は、一体何なんだろう?
「…何の事だか…オレさっぱりわかんないよ。」
ちょっと引きつった笑いで返す。
「…まだそんな事を言ってるのかい?」
恐る恐る背後の人物の顔を見た。
その顔は…。
満面の笑みなのに影が差しているように見えた…。
「…ご、ごめんなさい…。」
肩をガシッと掴まれ、
「いいかい?悟天に余計な事を教えるんじゃないぞ。」
さっきと変わらない笑顔で言われた。
「は…はい…。」
「ならいい。あんまりいたずらするんじゃないぞ?」
一気に気を静めて、いつもの、穏やかな親友の兄に戻り去って行った。
「…こ、怖かった…。」
その場に残されたオレは、暫く呆然としていた。
end