雨の日の唄
□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄29
(ありゃ?)
チチをこの腕に抱きながらソファで眠りこけていると、長男の気が異常な膨れ方をしたのを感じた。
(どうしたんだ?何かあったんか?)
少し微睡みながら考える。
「…ん…。」
ちょっと身体を起こした拍子にチチが身じろいだ。
でも完全に起きたわけでは無さそうだ。
チチは心地良さそうに小さな寝息を立てている。
まだ夕飯前だというのに、昼間に続き、またもチチに無理をさせた。
…夕べもだから…相当疲れてるよな…。
自分の行動に苦笑する。
でも仕方がない。チチを想うと、チチを目の前にすると、チチと二人っきりになると、どうしようもない衝動に駆られてしまうのだ。
「…好きだから…仕方がねえよなぁ…。」
自分で自分に言い訳をする。
チチの黒髪を撫で、ボーっと考える。
7年。7年も離れていた。…でも…。
この気持ちは変わらない。それどころか大きくなっている。
(そりゃ、アイツらも大きくなるよな…。)
死ぬ前は幼子だった長男も、生まれた事も知らなかった次男も。
次男は本当に自分によく似ている。会った事もなかったのに、すぐに親子とわかるくらい。
苦労をかけた長男はもう自分と変わらないくらいの背丈で、一瞬にして大人になったようで不思議だった。
そして、自分がこの腕の中の人物に初めて恋をした年齢と近くなっている。
(悟飯のヤツ…あのビーデルっちゅー娘に惚れてるよな?)
何だか嬉しくなった。
(そう言えば…。)
先程の長男の気の膨れは何なんだろう?
(どうせ、悟天とトランクスが何かしでかしたんだな。)
そう思うと少しおかしくなって笑みがこぼれた。
窓の外を眺め、雨音とチチの鼓動を感じて、再び眠りに落ちていった。
end