雨の日の唄

□雨の日の唄1〜30
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雨の日の唄30


「何だ…?」
「何よ?」

 ソファで妻と寛いでいると、庭のカプセルの中で自分のライバルの長男の気が大きくなるのを感じた。

「…悟飯の気が大きくなった。」

「はあ?何で?」

 自分の身体にもたれかかっている妻は少し間の抜けた声音で言ってきた。

「そんな事知るか。」

 そう呟いて窓の外を見やる。

 まだ雨は降っている。

「そう言えばカプセルの中は天気も自在に変えられるのよ。外からもね。」

 そう言って妻は不敵に笑った。

「…何を考えてる…?」

 何だか妻が何かをしでかしそうな気がした。

「チチさん言ってたのよ。悟飯君、ビーデルちゃんが好きなくせにその事自分でも気付いてないんじゃないかって。でも、さっきの様子じゃ自覚はあるみたいなんだけど、そのきっかけが無いみたいね。」

 嬉々として一気に捲くし立てる妻。

「だからね、ここは私が一肌脱いでやろうってワケよ!!」

 人差し指を自分の鼻先に差し出す。

「…何をするつもりだ…?」

 怪訝そうに訊ねる。

「ズバリ!!外から中を嵐にしちゃうのよ!!」

「…。」
「何よっ!!何か文句あるのっ!?」

 半眼で見やる自分に非難の声。

「…ほっとけ。」
「何でよっ!?」

「悟飯も男だ。自分で何とかするだろう。」

 悟飯があの黒髪の少女に惹かれている事は誰の目にも明らかだろう。もちろん自分もわかっていた。気付いていないのは本人達くらいか。

「だけど…。」
「なるようにしかならん。」

 非難の目を向けていた妻だったが、溜息を吐いたあと、微笑んだ。

「そうよね…。なるようにしかならないわ。こういう事は誰かの手で何とかするものじゃないもの。…私達のようにね?」

 妻は再び自分にもたれ掛かってくる。

「…フン…。」
 
 妻は自分の腕にその腕を絡ませる。

「でも悟飯君、何があったのかしら?」
「どうせトランクスがお前と同じような事をしでかしたんだろう?アイツはお前にそっくりだ。そういうお節介なところもな。」
「あら?あの子はアンタにそっくりよ?あのプライドの高いところとか。」

 二人の子という事か…。

 そんな事は言えるはずもない。

 自分達も人の親だという事を、妻と共に実感していた。


 end
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