雨の日の唄
□雨の日の唄31〜60
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雨の日の唄39
驚愕しているビーデルさんの目が、全ての答えのように思えた。
嫌われた―。
きっとそうなんだろう。驚愕のあまり、声も出ないらしい。
「…僕も…変身した事があります…。4歳の時にお父さんが殺されて、ピッコロさんに荒野に連れて行かれて独りで生活してた時に…。それと、ベジータさんと闘った時に…。記憶はないんで、後から聞いたんですけど…。」
「…。」
「…その時に切られて…もう無いんですけど…。」
もう尻尾は無いとは言っても大猿になったんだ。嫌われて当然だ。
「…お父さんも、子供の頃大猿になって…育てのおじいちゃんを…踏み潰してしまったそうです…。」
ビーデルさんの目が大きく見開いた。
これは別に言う必要はないけど、でも真実だ。
ビーデルさんはずっと黙っている。
これがきっと、答えなんだ。
「…怖」
「悟飯君。」
怖いですよね?と言おうとした時、突然名前を呼ばれた。
「はいっ!?」
緊張のあまり、声がひっくり返った。
「…辛かったね?」
「え…?」
ビーデルさんは優しく微笑んだ。
「悟飯君、とても辛い思いしたんだね?…おじさんも…おばさんも…。」
「ビーデルさん…?」
「今の話、怖くなかったって言ったら嘘になる。」
やっぱりそうか…。
「でもね」
ビーデルさんは僕の顔を真っ直ぐに見据えた。
「今の悟飯君は全然怖くないもの。優しい孫悟飯君でしょ?」
ビーデルさんは僕の顔を覗き込み、ニッコリと微笑んだ。
「過去の悟飯君は関係ない。私には今の悟飯君が全てよ。」
宣言するように、ビーデルさんは言った。
「ビーデルさん…。」
僕は不覚にも泣きそうになった。
end