雨の日の唄

□雨の日の唄31〜60
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雨の日の唄42


 悟飯君は私に自分の秘密を話してくれた。

 大猿になるだなんて、そりゃ少し怖かったけれど、それでも、私に話してくれた事の方が嬉しかった。

 これでも悟飯君の大変な過去の一部なんだろう。

 以前におばさんが『あの子は相当な苦労した子だから、どうしてもこれからは穏やかで幸せな生活を送って欲しい』と言っていた。

 だからきっと、今聞いた話はほんの一部なんだ。

 悟飯君にとって、過去には思い出したくない事もあるだろう。

 お父さんを2回も亡くし(今は生き返ってるけど…)、それだけでも辛い出来事だったはずなのに…。

 その過去の一部を、ほんの少しかも知れないけれど、私に話してくれたんだ。

 それだけで嬉しいって思う。

 好きな人の、過酷な過去はこちらとしても辛いけど、それでも、彼の事を理解して、支えてあげられたらなって…思う…。

 悟飯君がそれを望んでくれたら…だけど…。

 でも…。

 悟飯君って、おじさんとおばさんの話を嬉しそうにするんだよね。

 きっと自分じゃ気付いてないと思うけど。


 ホントに素敵なご両親だって思う。

 あの時、おじさんがあの世に帰ってしまう時、二人の別れに胸が詰まった。

 二人の精一杯の笑顔が、こんなにも切ない別れがあるのだろうかって…。

 それに悟天君の泣くまいと我慢していた健気さ、その日初めて対面したのにそれでもおばさんを託した、おじさんの悟天君への信頼。死んだと思われていた悟飯君への想い。

 どんなに離れ離れになっても、ずっと繋がっているんだと信じている家族の絆を見た気がした。

 悟飯君はご両親が羨ましいと言ったけれど、私は悟飯君も含めてあの家族が羨ましいと思った。

 私には持っていない家族の温かさ。

 パパも私を本当に愛してくれているけど、それとは違う温かさを持っている。

 私もいつか、あんな家族を作れるだろうか?

 その隣に、悟飯君がいてくれたら、あの家族の一員になれたら…なんて…。

 そんな事を考えてたら急に顔が熱くなって、両手で顔を覆う。

「ビーデルさん?」

 私の様子を怪訝に思ったのだろう。悟飯君が私の顔を覗き込んできた。

「え?あ、何でもないわっ!!」

 キョトンとする悟飯君。

 この人が私の事をどう思っているかわからないけど…

 それでも…

 私はこの人の過去をひっくるめて、本当に好きなんだと思った。



 end
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