雨の日の唄
□雨の日の唄31〜60
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雨の日の唄44
ベッドで横になり、気だるさに身を任せながらチチをこの腕に抱いていた。
すると、一瞬、今度は次男の気が大きく膨れた。
「あれ?悟天のヤツ…何超化してんだ?」
「…ん?」
チチはまだボーっとしていたけれど、自分の呟きに反応した。
「悟天、超サイヤ人になりやがった。あ、でももう解けてるな。」
「…寝ぼけたんだべ。」
チチは胸のところでクスッと笑った。
「そういやさっきさ、悟飯のヤツも超化するくれえ気が膨れたぞ。」
「どうせ悟天とトランクスがいたずらしたんだべな。」
「だな。」
自分達は顔を見合わせて笑い合う。
「悟飯さ、あのビーデルって娘の事好きだよな?」
「悟空さでもわかっただか?」
チチは大きな黒い目を大きく見開いて驚いていた。
自分も長男と同じような経験をしているのだ。それくらいわかる。ましてや自分達の子供の事だ。
自分もかつてこの腕の中の女に恋をして、すでに結婚をして自分のものだったのに、どう扱っていいのかわからなかった。
でもそれが恋だと気付くのに相当の時間を要した。
「…悟飯…ちゃんと自分がビーデルの事好きってわかってんのかな?」
自分はわからなかった。長男も自分に似てそういうところが鈍感だ。
「さあな。悟飯が気付いてるのせよ気付いてないにせよ、こういう事は自分で解決していくもんだ。そっとしとくのが一番だべ。」
チチはそう微笑むと自分の胸に頬を摺り寄せる。
「でも悟空さがその事に気付くなんてな。おらびっくりしたべ!!」
チチは目を丸くした後に笑った。
「そりゃわかるって。意外か?」
「意外だべ!!」
そりゃねえよ、と言いながらチチを抱く力を強める。
「オラも二人の子供の親だぞ?」
「まぁそうだけんど…」
自分達が一緒になってもう随分になる。でも一緒にいれた時間は結婚した年数に比べて随分少なかった。
死んだり宇宙に行ったり、離れてた期間が長かったが、それでも色褪せる事の無い想い。
恋が愛に変化して、その想いが永遠のものだと自覚した時、この身を犠牲にしてでもこの女を守るのだと決意した。
チチを抱く力をさらに強める。チチも自分を抱く力を強めてきた。
この温もりが全てだ。
雨音が優しく、この部屋を包んだ。
end