雨の日の唄

□雨の日の唄31〜60
15ページ/31ページ

雨の日の唄44


 ベッドで横になり、気だるさに身を任せながらチチをこの腕に抱いていた。

 すると、一瞬、今度は次男の気が大きく膨れた。

「あれ?悟天のヤツ…何超化してんだ?」
「…ん?」

 チチはまだボーっとしていたけれど、自分の呟きに反応した。

「悟天、超サイヤ人になりやがった。あ、でももう解けてるな。」
「…寝ぼけたんだべ。」

 チチは胸のところでクスッと笑った。

「そういやさっきさ、悟飯のヤツも超化するくれえ気が膨れたぞ。」
「どうせ悟天とトランクスがいたずらしたんだべな。」
「だな。」
 
 自分達は顔を見合わせて笑い合う。

「悟飯さ、あのビーデルって娘の事好きだよな?」
「悟空さでもわかっただか?」

 チチは大きな黒い目を大きく見開いて驚いていた。

 自分も長男と同じような経験をしているのだ。それくらいわかる。ましてや自分達の子供の事だ。

 自分もかつてこの腕の中の女に恋をして、すでに結婚をして自分のものだったのに、どう扱っていいのかわからなかった。

 でもそれが恋だと気付くのに相当の時間を要した。


「…悟飯…ちゃんと自分がビーデルの事好きってわかってんのかな?」

 自分はわからなかった。長男も自分に似てそういうところが鈍感だ。

「さあな。悟飯が気付いてるのせよ気付いてないにせよ、こういう事は自分で解決していくもんだ。そっとしとくのが一番だべ。」

 チチはそう微笑むと自分の胸に頬を摺り寄せる。

「でも悟空さがその事に気付くなんてな。おらびっくりしたべ!!」

 チチは目を丸くした後に笑った。

「そりゃわかるって。意外か?」
「意外だべ!!」

 そりゃねえよ、と言いながらチチを抱く力を強める。

「オラも二人の子供の親だぞ?」
「まぁそうだけんど…」

 自分達が一緒になってもう随分になる。でも一緒にいれた時間は結婚した年数に比べて随分少なかった。

 死んだり宇宙に行ったり、離れてた期間が長かったが、それでも色褪せる事の無い想い。

 恋が愛に変化して、その想いが永遠のものだと自覚した時、この身を犠牲にしてでもこの女を守るのだと決意した。


 チチを抱く力をさらに強める。チチも自分を抱く力を強めてきた。


 この温もりが全てだ。


 雨音が優しく、この部屋を包んだ。


 end
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ