雨の日の唄
□雨の日の唄31〜60
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雨の日の唄45
(…今度は悟天か…。)
何て騒々しい兄弟だ。兄貴の次は弟か。
ベッドに横になりながら嘆息する。
こんな夜中に超化するとは、カカロットはどういう教育をしているんだ。
…いや…何となくだけど、息子が絡んでいるような気がした。
(トランクスのヤツ…何かしでかしたか…?)
またも嘆息する。
息子は自分に似ているが、妙に調子が良く要領もいい。
(こんなところはブルマに似たのか?)
ふと笑みが洩れる。
こんなにも息子が妻に似た事を嬉しく思うなんて、自分も随分変わったなと思う。
侵略の為にやってきたこの星は、今は自分の住む場所になっている。
そして、妻と息子の故郷なのだ。
侵略するべきだったこの星に、妙な里心がついた事を否定はしない。
ひょっとすると、自分の人生の中で、一番居ついた場所かも知れない。
そして、自分の人生の中にこんなにも穏やかな時間が存在するなんて事も、あの頃は考える事もなかった。
侵略ばかりしていたのに、こんな平和な時間も悪くはないと思うのは、きっと妻と息子の存在があるからなのかも知れない。
(ほだされたか…。)
父であるベジータ王は、今の自分を見ると不甲斐ないと思うのだろうか?
それとも、家族を持てた自分の事を喜んでくれるのだろうか?
それはわからない。
今は無き、故郷を思い浮かべ、窓から空を見る。
生憎雨空だ。
苦笑し、隣の妻を見る。
妻は幸せそうな顔をしてスヤスヤと寝息を立てている。
こんな顔は息子に似ている。いや、息子が妻に似ているのだ。
少し出ている妻の肩に毛布をかけてやる。
そして再び嘆息する。
(…頼むから静かにしてくれ…。)
庭のカプセルの中にいる息子とライバルの息子達に胸中で呟いた。
end