雨の日の唄
□雨の日の唄31〜60
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雨の日の唄48
朝、雨音で目覚めるとチチはまだベッドにいた。
ぐったりと死んだように眠っている。
「…無理させちまったかな…?」
一応は反省する。
しかし、その反省も今だけで、そのうちその反省も頭から消えてしまうのはわかっている。
チチも子供達がいない事で気が抜けているんだろう。
チチは完璧な母であり、そして妻だ。
どんなに自分が無理をさせても、こんな時間まで寝入っているなんて事は珍しかった。いつも夜明けと共に起きだして、朝食の準備を始めるのだ。
明るい時間に、長い黒髪を乱してぐったりと眠るチチ。そうなかなか見れるものではない。
なんせ自分よりも早く起きるのだ。
いつもは見られない、貴重なチチを眺めて堪能する。
…きれいだな…。
そう思う。
女の美醜など一つも理解できない自分でも、チチの美しさだけは理解できる。
チチはきれいだ。
長い黒髪も、白い肌も、黒くて大きな瞳も、全部がきれいなチチ。
そして心根も。
チチは自分は歳をとったというけれど、そんな事自分には関係ないのに。
チチがどんなに歳を重ねても、チチはチチだし、自分はチチしか好きではないのに。
宇宙人である自分を受け入れてくれて、死んだ自分をいつまでも待っていてくれて、一人で子供達を育ててくれたチチ。
自分にとって彼女以外にきれいな女なんていない。
チチをずっと眺めているとまた衝動にかられそうになった。
ダメだ…。
今はチチを寝かせてやらねば。
二人っきりの時間はまだ1日あるのだ。
少し我慢する事くらいしてもいい。
それよりも今は、きれいなチチを抱き締めよう。
少し冷たくなっているチチの肩を抱き寄せ、想いと共に熱を与える。
新婚の、初めてチチを抱いた、あの日の朝のように。
end