雨の日の唄

□雨の日の唄31〜60
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雨の日の唄53


「ちょっとベジータ。どこ行くの?」

 まだ妻が寝ているベッドから気付かれないように出たつもりだった。

 寝室を出ようとすると、背後から声をかけられた。

「…どこって…トレーニングだ…。」

 振り返らずに言う。

「夕べトレーニング禁止って言ったじゃないの。」
「知らん」

 知ってはいるが承諾した覚えはない。

「今日は二人っきりで過ごそうって言ったじゃないのよ!!」
「…知らん…。」

 それも知っている。だが、こうしているうちにカカロットにまた差を付けられてしまう。

「…アンタ…トレーニング休むと孫君と差が開くとか思ってるでしょ?」

 思わず勢いよく振り返る。
 この女、何故俺の考えてる事がわかる!?

「何で思ってる事がわかる?でしょ?」

 ブルマは呆気にとられている自分の傍に来て腕を組んできた。

「わかるわよ、ベジータの事だもん。」

 そう言ってニッコリと笑う。

「うっ…」

 この女はこう言うと自分が何も言えなくなる事を知っている。

「それにさ、今日は孫君も修行どころじゃないと思うわよ?」
「何?」
「だってさ」

 何かを含んだような顔で続けた。

「孫君もチチさんと二人きりなのよ?」
「あ…」

 そういう事か…。

 仕方がない。

 ライバルもそうならば、今日は自分も妻と二人、ゆっくりするのも悪くない。


 end
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