雨の日の唄

□雨の日の唄31〜60
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雨の日の唄56


 テントの外でボーっと考え事をしていると、ビーデルさんの気が近付いて来た事に気が付いた。

 そして振り向くと少し不機嫌そうなビーデルさんがいた。

(低血圧かな?)

「おはようございます。」

 夕べの事もあるし、少し気まずさはあるものの、努めて明るく振舞った。
 でも、ちょっと白々しかったかな?とも思う。

「おはよう悟飯君、よく眠れた?」
 
 近付いてくるビーデルさんは、少し戸惑い気味の声で言った。

「え、ええ、まあ…」

 眠れてなんかないのに、何となくだけど咄嗟に嘘を吐いてしまった。

「…そう…。」

 するとビーデルさんの顔がちょっと曇ったように見えた。

「ビーデルさんはよく眠れましたか?」
「ええとっても!!」

 その声音は何となく怒気を含んでいるように思えた。

「私、朝食の用意があるから行くわ。」

 ビーデルさんは踵を返してスタスタと歩いていく。

「あ、僕も何か手伝います。大飯食らいばっかりだから大変だし。」
 
 昨日はテントの準備とか悟天とトランクスをお説教するだとか、何か大変だったから手伝えなかったし。
 
 僕がビーデルさんを追おうとすると、

「結構よっ!!」

 振り向きざまに怒鳴られてしまった。

「へ?」

 僕の進みかけていたその足は完全に止まってしまった。

 そしてビーデルさんの顔を見る。その顔には明らかに怒りが含まれていた。

 な、なんで…?

 僕…何か怒らせるような事をしたのだろうか…?

 夕べの話がやっぱり重かったのだろうか?

 僕は立ち去っていくビーデルさんを呆然と見送っていた。


 end
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