雨の日の唄

□雨の日の唄31〜60
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雨の日の唄37


「…ビ、ビーデルさん…?」

 満月を眺めているとふいに名前を呼ばれ、振り向くとビーデルさんが立っていた。

「何してるの?悟飯君。」
「…え…っと…喉渇いちゃって…起こしちゃいました?」

 僕は今きっと、突然の事で顔が引きつってるに違いない。

「ううん、私も起きてたの。」
「そ…うですか…。」

「キレイねえ。」

 ビーデルさんは星空を眺めて言った。

 その横顔の方が僕にはきれいに見えて…って、僕は何をっ!?

「…ねえ悟飯君、さっき悟飯君、ちょっと苦しそうに見えたんだけど…。」
「…え…?」

「…何かあるの…?」

 ビーデルさんは遠慮がちに聞いてきた。

 何て敏感は人なんだろう。

 それとも僕に変化があったのだろうか?


 ビーデルさんの目を見る。

 その目は何かを覚悟したような、意志の篭った目に見えた。

 その目を見ていると、僕は何もかも話してもいいような気がした。

 いや、ビーデルさんのこの目がなくても、僕はいずれこの人に全てを話すだろう。

 なら、それは今でもいいのかも知れない。

「悟飯君…別に話したくなければ話さなくてもいいのよ…。」

 ビーデルさんはふと目を逸らした。

「…ちょっと…気になっただけだから…。」

「いいえ…。」
「え?」

 全てを話せと、僕の中の何かが叫んだ気がした。

「全部お話します。聞いてくれますか?」


 end
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