novel

□Nonchalant happiness
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 夕食後、悟空と悟天は一緒に風呂に入っている。

 悟天のはしゃぐ声がリビングにまで聞こえてくる。

 悟天は生まれてから今日まで父親のぬくもりを知らずに育った。

 死んだはずの実の父が意図せず生き返ったのだから、甘えたくて仕方がないのだ。

 チチはお茶を煎れて悟飯の前に座った。

 そしてお茶を啜り、はぁと息を吐いた。

「大変な1日でしたね」

 悟飯はそう母に問いかけてお茶を一口口に含んだ。

「そうだべなぁ……大変な1日だったべ……でも……幸せな1日だべ……」

 そう言ってチチは目を細めた。

 その目は薄っすらと潤んでいる。

 悟飯は幸せそうなチチの姿に胸がいっぱいになった。

 悟空が死んでからの7年間、一番辛かったのはチチだった。

 悟飯は悟空の分までチチを守っているつもりでいたが、精神的な部分でいつも守られていた。


 やはりチチは保護者だった。


 そして悟天が生まれ、より忙しくなったチチだったが、子供達を、悟空が遺してくれたこの我が子達を立派に育てていく事が生きがいになっていた。
 
 悟飯は日に日に逞しくなっていく。
 生前の夫がしていたように食料の調達もこなしている。
 
 背が伸びる毎に、骨格がしっかりしてくる毎に、筋肉が付く毎に、声が低くなっていく毎に、顔の線が鋭くなっていく毎に、日を追う毎に夫に似てくる長男。
 
 チチは以前ほどに勉強しろとは言わなくなったけれど、悟飯は自主的に勉強を続けている。勉強の合間を見計らって修行もしていた。
 
 悟天は亡き夫に瓜二つだった。
 
 そんな次男坊を見ていると切なくなってくる。でも同時にとても嬉しくなった。

 夫が自分に遺してくれた夫そっくりな次男。

 これからももっと悟空に似てくるのだろう。

 そう思うと悟天の成長が本当に楽しみだった。
 
 苦労もした。生活も大変だった。

 悟空を追って自ら命を絶ってしまおうと思った事もあった。

 だけどしっかり者の長男と自分の父親、夫の仲間達の支えのおかげで、何とかここまでやってこれた。

 悟空の遺してくれたこの大事な存在達が、チチに生きる気力を与えてくれた。

 そんなチチの苦労も今日、報われたのだ。


 夫が生き返った。
 

 今までの苦労も忘れるくらい嬉しい日。

 チチは一つ涙をこぼした。


「……お母さん……」

 悟飯はそれを見逃さなかった。

 だけど何を言っていいのかわからない。

 今までの母の苦労を思うと言葉が出てこないのだ。

 だけどその顔は幸せに満ちていて、まるで十代の娘のように華やかだった。

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