novel
□赤い糸
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どんなに遠くに離れていても
どんなに会えない時間が永くても
この糸がある限り
二人はずっと繋がっているから
「なぁチチ、『うんめいのあかいいと』って何だ?」
寝室に入ると、ダブルベッドの上であぐらをかいている夫が唐突に訪ねてきた。
「いきなり何だべ?」
チチは化粧台の前に座り、鏡越しに悟空を見た。
「いやよ、さっき悟飯と悟天と一緒にテレビ見てたら『うんめいのあかいいと』って言っててよ」
すると悟天が『兄ちゃんとビーデルお姉ちゃんの事だね』と言ったらしい。
悟空が「何だそりゃ?」と問うと、すでに真っ赤になっていた悟飯が悟天を抱えて「おやすみなさい」と慌てて部屋に戻った。
悟空はその悟飯の反応が気になっていたらしい。
チチは真っ赤になって慌てふためく長男の姿を容易に想像できて可笑しくなった。
クスッと笑うチチに悟空は何だよ〜教えろよ〜と子供のように拗ねたような態度を見せる。
これはチチにしか見せない姿のうちの一つだ。
チチは艶やかで豊かな黒髪を梳きながら悟空に説明を始めた。
「『運命の赤い糸』って言うのは、結ばれるべき男女の小指に繋がってる見えない糸の事だべ」
「ふ〜ん」
悟空は少し興味なさげな相槌をしたが、すぐに何かに気付いたように口を開いた。
「何でさ、見えねえのに赤い糸ってわかるんだ?」
まるで子供だ。
「……えっと……」
それを言われると困る。
チチは開き直り、
「おらだって知らねえ。見た事ねえもん。昔っからそう言うんだ。誰か見た事ある人がいるんでねえか?」
大体こう言うと悟空は納得するので、チチも適当にお茶を濁した。
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