novel

□a modest wish
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月の光が、その輪郭を淡く照らす。
 
けれどもその影は色濃く

手を伸ばせば届く距離なのに、

限りなく、遠く感じた。



「悟飯は神殿に預けてきた」

 突然瞬間移動とやらで戻ってきた夫が言った。

「なして?」
 
 夫が言うには異星から新しく迎えた神様が息子の友人で、まだ子供だというその新しい神様と、田舎暮らしの為友達と呼べる友達もいない息子の為に置いて来たのだという。

「……なしておらに黙って……」
 
 少しふてくされ気味に言う。

「まあいいじゃねえか。オラだってオメエと二人っきりになりてえし」
 
 嫌か?と翡翠色の双眸で覗き込まれて問われれば誰が嫌だと言えるものか。

 子供のような笑顔に大人の男の台詞。

 その違和感に眩暈すら覚える。

 この夫はいつだって自分の心臓を鷲掴んで離さない。
 
 セルゲームまでの9日間、夫は家族の時間をたくさん持った。

 夫婦の時間を大事にした。

 いつだって修行バカで、強くなる事しか考えてないような夫。

 修行に出たまま何日も帰らない日もあった。

 それどころかあの世と宇宙にまで行ってしまい、何年も帰って来なかった。


 そんな夫が自分から離れようとしない。

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