novel

□アイシテル
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 いくらチチにどやされたってオラはチチの元に帰って来るんだ。

 オラの帰る場所はチチのいる所しかねえ。

 クリリンもヤムチャも、チチは女の中でもかなり可愛いって言ってた。

 だけどそんな事オラにはどうでもいい。

 だってチチはチチだ。

 可愛いかどうかは他の女と比べてって事だし、オラにとって女はチチだけだ。

 チチ以外の女には興味がねえ。

 オラはチチがどんなだってチチしかいねえって思う。

 チチを手に入れて、オラは自分の足りなかった部分を取り戻した気がする。

 生まれる前から決まってた。そんな気がするんだ。

 自分のチチに対する気持ちは何て言うんだろう?

 好きとも、大好きとも違う。
 
 それよりもっと重たい気持ちだ。

 これがチチがよく言う『アイシテル』ってヤツなんだろうか?

 よくわからない。

 だけどちゃんと意味がわかったら、照れくせえけどチチに言いてえ。



「悟空さぁ、寝ちまったのけ?」

 ふいにチチに声をかけられた。

 チチの事を考えてるうちに長風呂をしちまったらしい。

「い、いや起きてるぞっ」

「ご飯の支度できてるから、早く上がってけろな」

「おう!」


 早く上がってチチの顔を見ながら飯を食おう。


「うめえだか?悟空さ」

「おう!! すげぇうめえぞ!!」
 
 そう言うとチチはいつも嬉しそうな顔をする。

 その顔を見るとチチのうめえメシがもっともっと何倍にもうまくなるんだ。


 メシが終わってもチチは洗い物やら朝飯の下拵えがあって忙しそうだ。

 それも全部オラが大飯食らいだからだそうだ。

 チチの後ろ姿をリビングのソファからジッと見てると、何故だか胸の奥がほんわかしてくる。

 チチは用事が済むとオラが座っているソファに向かって来る。

 オラはチチの分のスペースを開けてやると、チチは滑り込むように座る。そしてオラの肩にもたれかかってくる。

 オラはチチの肩を抱き、その艶やかな黒髪に顔を埋める。

 オラはそうやってるのが大好きだ。
 チチの匂いをいっぱい嗅ぐとすごく落ち着く。


 チチとケッコンするまで、オラは独りで生きていくモンだと思ってたし、生きていけると思ってた。

 でもチチとケッコンして、チチの存在が大きくなって、チチを好きになっていく度に、もう独りでは生きていけないんだって思った。

 きっとオラはもう独りになるのが怖いんだと思う。

 チチを失うのが怖いんだ―。

 神様の所で修行してる時に神様が言った。

『守るべきものが出来て怖さを知った時、人は真に強くなれる』って。

 そん時は意味が全然わかんなかった。怖いのに何で強いんだって。

 でも今ならわかるんだ。

 チチを失うのが怖い。でもチチを守る為に、オラはもっともっと強くなんなきゃなんねえって。

 それを教えてくれたんはチチなんだ。

 チチが言うにはこれから子供も出来てもっと家族が増えるんだって。
 その子供にまた子供が出来て、もっともっと家族が増えるんだって。


 楽しみだな。


 これからいろんな事があるんだろうけど、オラはチチと家族を守っていくんだ。


心が弾む。

チチが自分の傍にいることがこんなに嬉しい。

チチの存在がこんなにも大事。

ああ、そうか。

これが『アイシテル』なんだ―。


 end



       
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