novel
□Scar of tears
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月明かりが君の横顔を照らす。
月の雫が落ちたような涙の痕が、
自分の過去の過ちを責めているように感じた。
「……チチ……?」
深夜、窓際に気配を感じ、悟空は目を覚ました。
気配を感じた方を見るとチチが窓辺に佇んでいた。
その横顔は月明かりに照らされて蒼白く、異様な美しさで悟空の胸の鼓動は激しくなる。
「チチ?」
いくら声をかけても反応がない。
悟空は妙な胸騒ぎを覚えてチチの元に歩みよる。
チチの傍まで来た時、チチの頬に涙の跡が見えた。
「……チチ……? どうしたんだ…?」
悟空はチチの肩を抱くと、それまで全く反応が無かったのに、ビクッと動いた。
「……悟……空さ……?」
ハッと我に返ったように反応する。
「……オメエ……こんなトコで何してんだ?」
悟空の声音には不安が混じっていた。
「……ああ……悟空さ……死んでなかったんだべな……」
明らかにホッとしたような表情を見せた。
「……チチ……?」
「みんながな、悟空さが死んだって言うんだ。セルと自爆したって言うんだ……悟飯がな、『母さんにすまねえ』って言ってたって言うんだ。悟空さ死んでねえのに、おかしいべ」
そう言って薄く笑うチチは異常な美しさを発していた。
「だからおら、ずっとここで悟空さのこと待ってただよ。ここだったら悟空さが帰ってくるのよく見えるから……」
「っ、チチッ!!」
悟空はチチの肩を掴んで自分の方に向き直らせ、
「オメエどうしちまったんだ!? しっかりしろよチチッ!!」
勢いよく向き直らせたのに、チチの瞳は何も映していないようだった。
「オラ、セルと自爆して死んだけど、生き返っただろ!? こうしてここに、チチの所に帰ってきただろ!?」
悟空はチチを力いっぱい抱き締めた。
この熱が、この想いが、チチに伝わってくれと。
「……この悟空さは本物なんだべか……?」
チチは悟空の頬に触れると、気を失ってしまった。
「チチッ!!」
気を失ったチチの頬に残る涙の痕をなぞる。
この涙の痕が悟空に罪悪感を与えた。
腕の中のチチを見ると、今は小さな寝息をたてている。
その様子に少しホッとしながらも、チチの負った心の傷を思う。
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